共同購入型クーポンサイト「グールポン」で起こった「スカスカおせち事件」ですが、原因やバードカフェのその後も話題です。
今回は「スカスカおせち事件」の詳細と原因、グルーポンの対応やバードカフェのその後を紹介します。
この記事の目次
- 「スカスカおせち事件」とは
- 「スカスカおせち事件」の騒動の舞台となったグルーポンとは
- 「スカスカおせち事件」の詳細① 騒動の発端はバードカフェ
- 「スカスカおせち事件」の詳細② 詐欺レベルの商品が送られてきて炎上
- 「スカスカおせち事件」の詳細③ グルーポンは神対応をみせる
- 「スカスカおせち事件」の詳細④ グルーポンの調査の末にさらなる不正が発覚
- 「スカスカおせち事件」の詳細⑤ バードカフェ社長は引責辞任
- 「スカスカおせち事件」の原因① キャパオーバー
- 「スカスカおせち事件」の原因② 判断ミス
- 「スカスカおせち事件」の原因③ グルーポン側のチェック体制の不備
- 「スカスカおせち事件」のその後① バードカフェの早期復活に批判殺到
- 「スカスカおせち事件」のその後② フィギュアや逆手にとった商品が発売
- 「スカスカおせち事件」のその後③ 「グルーポン」は日本から撤退
- 「スカスカおせち事件」の現在
- 「スカスカおせち事件」のまとめ
「スカスカおせち事件」とは
「スカスカおせち事件」とは、共同購入型クーポンサイト「グルーポン」にて、2010年末から2011年の年始にかけて起こった炎上事件です。
共同購入型クーポンとは、一定時間内に一定数が揃えば、購入者は大幅な割引率のクーポンを取得することができるという手法。たとえば「24時間以内に30人の購入希望者が集まれば、フルコースディナー7400円相当が54%割引の3500円になるクーポンを提供」のような形態をとる。指定された時間内に最低販売数に到達しなければ不成立となり、クーポンは提供されない。
引用:共同購入型クーポン
当時一大ブームを巻き起こしていた共同購入型クーポンサイトの信頼性を揺るがす事態になり、ネット界隈だけの炎上では収まらず、ワイドショーが特集する大騒動にまで発展しました。
この記事では、そんな「スカスカおせち事件」の詳細とその後について紹介します。
「スカスカおせち事件」の騒動の舞台となったグルーポンとは
「スカスカおせち事件」の舞台となった「グルーポン」は、2008年に創業されたアメリカの企業です。
そんな「グルーポン」は2010年10月、当時共同購入型クーポンサイトを経営していた「クーポッド」を買収して日本法人化したことで日本に進出。
当時、大小100社以上の事業者が共同購入型クーポンサイトを運営するというバブル期で、「グルーポン」の日本事業は出足から絶好調。初月の月間売上は10億円超えだったようです。
しかし、「グルーポン」の記念すべき日本市場進出1年目に「スカスカおせち事件」が起こっています。
ちなみに、ここまで共同購入型クーポンサイトが流行した背景には、集客から売上管理までを運営側が代行してくれる仕組みだったため、店舗側が参入しやすいというメリットがありました。
また、利用除外日を設定でき、客入りの悪い時期の集客対策として利用できると考えた店舗も多かったようです。
「スカスカおせち事件」の詳細① 騒動の発端はバードカフェ
「スカスカおせち事件」の発端は、2010年11月下旬に「グルーポン」に登場した神奈川県のレストラン「バードカフェ」が販売していた商品「バードカフェ 謹製おせち」のクーポンです。
「バードカフェ 謹製おせち」のクーポンでは、33品種4人分の謹製おせち(定額2万1000円)を、半額で購入できるというお得なサービスでした。
(FISH)
ノルウェースモークサーモン/才巻き海老の白ワイン蒸し/キャビア/〆鯖の棒寿司/鮑の冷製作/海老のテリーヌ/田舎作り/フカヒレのにこごり/帆立の瞬間スモーク/牡蠣のエスカベッシュ/いくらの醤油煮/鰊の昆布巻き/焼き蛤
(VEGETABLE)
海老芋と京人参、小堂院大根の炊き合わせ/紅白なます/くわいのバルサミコ風味/数の子の冷製/筍のグリエ/栗金団/蓮根の甘酢漬け/彩野菜のピクルス 黒酢風味/紅白嘉蒲鉾/伊達巻/丹波の黒豆
(MEAT)
手羽中の醤油煮/フランス産シャラン鴨のロースト/国産和牛ロースト/名古屋コーチンもも肉の燻製/砂肝のコンフィー マスタードソース/鹿児島産黒豚の京味噌漬け/蟹爪のフリット/生ハムとカマンベールチーズ/肉巻きのロースト
そのため非常に人気が高く、最低販売数100人に対し、500人もの購入者が殺到しました。
「スカスカおせち事件」の詳細② 詐欺レベルの商品が送られてきて炎上
多くの購入者が豪華なおせちをお得に買えたと喜んでいた「バードカフェ 謹製おせち」ですが、実際に送られてきた商品は、宣伝写真とは似ても似つかない粗末な代物でした。
おまけに、クール便ではなく通常便で届けられたケースもあったようで、届いた時にはすえた臭いが漂っていたとの声もありました。
中には、配送予定日だった12月31日までにおせちが届かなかった購入者もおり、年末から年始にかけてネット上で大炎上。
バードカフェって会社の通販おせちが酷いということで、見てみた。これはゴミだと思う。10,500円でゴミを売りつけるとか酷い会社だねぇ。
— けんた (@kentayui) January 1, 2011
「スカスカおせち事件」の詳細③ グルーポンは神対応をみせる
「スカスカおせち事件」では、当然ながらサイトを運営していた「グルーポン」に対しても購入者からの苦情が殺到しました。
ちなみに、2010年12月31日までに集まった苦情数が92件だったと言われており、購入者の2割もの人のもとに悪質な商品が届いていたことになります。
そのため、事態を重く見た「グルーポン」サイドは、すぐに「バードカフェ」への聞き取り調査を開始。
2011年1月1日には、HP上で「購入者に対して全額返金+5000円相当のギフト券を配布」と発表しました。
バードカフェの腐敗おせち送付問題.グルーポンが全額返金&お詫びとして5000円分の商品or商品券を購入者に送付する模様.また,当事者のバードカフェも,(一部の?)購入者宅に直接お詫び&返金に伺う対応とのこと.まぁ,常識的な対応だったとは思うけど,いったい何がしたかったのだろう?
— tetsukay (Kuchinashi) (@kuchinashi_r) January 1, 2011
「スカスカおせち事件」の詳細④ グルーポンの調査の末にさらなる不正が発覚
「スカスカおせち事件」は2011年1月29日、「グルーポン」の調査の結果、食品偽装などの不正があったことが発覚しています。
それによると、世界三大珍味の1つとされるキャビアが、実際はコピー食品としてよく使われるランプフィッシュになっていた。また、フランス産シャラン鴨のローストとうたってあったのは、国産の合鴨のローストだった。このほか、生ハムとカマンベールチーズが生ハム&クリームチーズに、鹿児島産黒豚の京味噌漬けがアメリカ産の黒豚の京味噌漬けに、鰊の昆布巻きがわかさぎの昆布巻きに、才巻き海老の白ワイン蒸しがバナメイ海老の冷製に、くわいのバルサミコ風味がたたき牛蒡に、それぞれ取って代わっていた。
そして、焼き蛤との表示もあったが、実際の料理には欠品していた。
ただ、こちらの不正については購入者がアップしたスカスカなおせち画像を見た時点で気が付いていたネットユーザーも多く、失笑が漏れていました。
バードカフェのおせち問題で今度は食品偽装が…ってまた騒いでるけど最初から分かってただろwwwカマンベールチーズと謳っておきながら、どうみても8Pチーズだったじゃんwwww
— ハルイチ (@haru720) February 1, 2011
「スカスカおせち事件」の詳細⑤ バードカフェ社長は引責辞任
「スカスカおせち事件」では、騒動の原因となった「バードカフェ」に対して、横浜市が食品衛生法に基づいた立入り検査を行っています。
また、消費者庁も乗り出し、「グルーポン」や「バードカフェ」の運営会社「外食文化研究所」に事情聴取を実施。
その結果、「外食文化研究所」社長だった水口憲治氏が、2011年1月31日付で辞任しました。
「外食文化研究所」は「スカスカおせち事件」当時、横浜市と藤沢市に「バードカフェ」を出店していましたが、事件の余波で横浜市内の店舗は開店休業状態に陥ります。
そのうえ、謝罪広告やおせち代金の返金などで、3000万円ほどのお金が吹っ飛んでしまったそうで、水口憲治さんは自身の自宅だった横浜市内のタワーマンションを売却したそうです。
「スカスカおせち事件」の原因① キャパオーバー
「バードカフェ」は「スカスカおせち事件」以前にも、「グルーポン」で食事券などのクーポンを3回ほど販売しており、その時はトラブルがなかったようです。
そのため、元々はちゃんとしたレストランだったと思われます。
そんな「バードカフェ」が「スカスカおせち事件」を起こしてしまった原因の1つは、見積もりの甘さでした。
おせちは作り慣れた老舗料亭でも、食材の確保の困難さから、300個ほどの受注が限界と言われています。
一方で「バードカフェ」は、これまでにおせちを販売した実績がなく、お弁当を作る感覚で安易に500人分の発注を受けてしまったようです。
そのため、いざおせち作りに取り掛かってみると、必要量の食材すら確保できなかったと言われています。
「スカスカおせち事件」の原因② 判断ミス
「スカスカおせち事件」が大惨事に発展してしまった2つ目の原因には、「バードカフェ」側の判断ミスも大きかったと言えるでしょう。
必要分の食材を確保できないと分かった時点で、本来は「グルーポン」側にキャンセルの連絡を入れるべきでした。
しかしながら、水口憲治元社長はプロジェクトの失敗を認めることができず、「できるところまでやろう」と続行可能と判断。
そのため、世にもみすぼらしいおせちを購入者に届けるという暴挙に出てしまいました。
「スカスカおせち事件」の原因③ グルーポン側のチェック体制の不備
「スカスカおせち事件」の騒動が拡大した原因には、「グルーポン」側の品質管理体制の不備もありました。
当時の「グルーポン」は、日本に上陸して数か月程度の新興企業だったため、商品やサービスの品質をチェックするシステムがずさんであり、事実上店舗側に丸投げだったようです。
また、「グルーポン」の営業マンが店舗に無理強いをする傾向があり、二重価格も同然なサービスや商品が横行していたとも言われています。
この点について、実際にお店を運営する側が、通常価格よりも定価を上げた上で元よりも低い価格で売って欲しい(例:5000円の品の定価を1万円ということにして、それを4500円に割引して売って欲しい)と、二重価格の申し出を受けたということを告白しています。この店長は、グルーポンの提示する条件を受けるよりも、グルーポンに取られる手数料などの分をお客さんに還元できるのではないかと考え、申し出を断ったそうです。
ちなみに、「バードカフェ 謹製おせち」に対しても、消費者庁から「グルーポン」側へ表示適正化の指導が入っています。
グルーポン・ジャパンに対しては、おせち料理のような極めて短期間に販売される商品には「通常価格」が存在しないと説明。それにもかかわらず、グルーポンで販売価格が「通常価格」から50%以上割り引かれたものであることを掲載の条件とする限り、存在しない「通常価格」を比較対象価格に用いた二重価格表示が行われることになると指摘した。
「スカスカおせち事件」のその後① バードカフェの早期復活に批判殺到
「スカスカおせち事件」後の「外食文化研究所」は、事件から約1か月後の2011年2月に「バードカフェ横浜店」の店名を「THE GRANCH」と変更し、再出発を図っています。
しかし、求人情報サイトに掲載された店内内装や集合写真が「バードカフェ」時代と同一だったことで元バードカフェとバレて、各種メディアに取り上げられました。
ネット上で「再始動が早すぎる!」「反省していない!」といった批判が殺到し、炎上。
結局、「THE GRANCH」での再出発計画は頓挫しています。
バードカフェのおせち騒動がグルーポンに飛び火し、本家は沈静化したと思ったら…凝りもせず、同じ跡地に『THE GRANCH』で新店舗開店らしい。外食産業に再興はありがちだけど、系列店舗では、地鶏の偽装もあったことだし…。こういうのは、全て禊が済んでからにすべきだと思うんだけどな。
— ふっち@青息吐息 (@futch_t) February 6, 2011
それでも諦め切れなかった「外食文化研究所」は、以降も「OKANO HOUSE」や「チーズ工房カマンブルー」といった店名で再起を図っています。
とはいえ、ぐるなびのURLがバードカフェ時代の使いまわしですぐに再起がバレてしまい、世間の好奇の目に晒されることになりました。
「スカスカおせち事件」のその後② フィギュアや逆手にとった商品が発売
2011年2月になると、世界最大のガレージキットイベントである「ワンダーフェスティバル」にて、「スカスカおせち事件」をネタにしたフィギュアが発売されて話題を集めました。
2014年には、「グルーポン」が騒動を逆手にとった「ぎゅうぎゅうおせち」を販売。
その他、「スカスカおせち事件」はネットミーム化しており、スカスカなお弁当を見ると、あの騒動を思い出してしまうネットユーザーが多いようです。
この写真…グルーポンのバードカフェおせち事件を思い出した😅 pic.twitter.com/z8ItEsN72v
— TeLu. (@starry_night78) September 17, 2022
カバンに縦に入れてたらバードカフェのおせちみたいになった餃子弁当いただきます。 pic.twitter.com/1aLADen1Z0
— アッシュ (@kkjzep) January 12, 2020
「スカスカおせち事件」のその後③ 「グルーポン」は日本から撤退
「スカスカおせち事件」では、当然ながら「グルーポン」の信用も失墜しています。
「スカスカおせち事件」以降の「グルーポン」は、イメージダウンの影響で2011年1月より3か月連続で売上が減少。
グルーポンの2月売上が前月比15.7%減の8億8272万円に着地。史上最速と評されていた成長から一転。2カ月連続の販売高減少となった。おせち一発でブランドイメージが一転してしまった。同様のリスクはネット上でモールを展開している企業だけでなく、リアルなショッピングセンターにもある。
— 杉井伸二 (@headlockoffice) March 8, 2011
そして、日本上陸以来死守していた売上1位の座から転落しました。
ちなみに、「グルーポン」の代わりに共同購入型クーポンサイトの売上1位の座についたのは、リクルートが運営する「ポンパレ」でした。
グルーポン、日本市場から撤退
「スカスカおせち事件」後の「グルーポン」は、その後も巻き返すことができず、2020年9月になると日本市場から撤退しています。
ただ、代わりに業界首位に立った「ポンパレ」や楽天が運営する「ラ・クーポン」も共同購入型クーポンの取り扱いをやめるなど、業界全体の縮小も要因のようです。
共同購入型クーポンサイトが10年も経たずに廃れてしまった背景には、前述した定価の水増しの他、商品やサービスのグレードダウンに手を染める店舗が多かったことが挙げられています。
そのため、利用客の間で「価格に見合わない」との不満が募り、共同購入型クーポンサイト離れが起こってしまったと言われています。
店舗側にそういったモラルハザードが横行した原因は、運営側に多額の手数料を持っていかれるため、普通の商売をすれば赤字になってしまう問題があったようです。
ちなみに、「グルーポン」の手数料は売上の50%でした。
「スカスカおせち事件」の現在
水口社長、実は再起に成功していた
「スカスカおせち事件」を起こした外食文化研究所の元社長だった水口憲治さんは、現在は実業家としての再起に成功しています。
「バードカフェ横浜店」の跡地で再スタートした「チーズ工房カマンブルー」も結局は閉店。
その後、イタリア料理店「green+」をオープンするもののすぐに閉店してしまうなど、しばらくの間は「スカスカおせち事件」の余波で逆風が続きました。
しかし新運営会社「SURF CAPP inc.」を立ち上げ、「スカスカおせち事件」が風化した2015年には、神奈川県下で14店舗もの飲食店を経営し、騒動前よりも事業は大きくなっています。
ちなみに、「SURF CAPP inc.」が展開する店舗には、イタリア料理「ワイン酒場COLTS」や、チーズケーキ専門店「コモンべべ」などがあります。
水口憲治の経歴
水口憲治(みずぐち けんじ)
生年月日:1968年4月30日
「スカスカおせち事件」を乗り越えて、劇的な復活を果たした水口憲治さんですが、元々はインテリアデザイナーとのこと。
水口憲治さんがインテリアデザイナーを志したきっかけは、19歳の頃に飲食店で見かけたインテリアデザイナーのカッコ良さに憧れて、業界を目指したとか。
その後、夜間学校に通い、24歳の時に代官山の有名デザイン事務所に就職しますが、飲食店の設計に携わっているうちに、興味の対象が飲食店経営に移ることになりました。
そんな水口憲治さんが実業家としてのスタートを切ったのは26歳の時で、FCの焼き鳥チェーンをオープン。
ただし、いざ開店してみるとまったくお客が来ずに閑古鳥が鳴くスタートだったそうです。
そのため、挨拶・掃除・時間管理を徹底してサービスの質を改善してみたところ、半年後には月商200万円の繁盛店になったとか。
以降は、独自ブランドの「いち稟」をオープンするなど、実業家として順調なキャリアを送りますが、「いち稟」のFC展開を試みた際に大失敗も経験しているようです。
しかし2004年、FC展開を視野に入れた水口氏は、そのノウハウを得るため、社員の大反対を押し切って、あるFCに加盟。これが毎月450万円の赤字を生む完全な裏目に。「会社が潰れてもおかしくなかった」。すべての社員に正直に打ち明け頭を下げた。すぐにFC契約を解き多額の違約金も払った。借金は膨れ上がったが、社員との絆は深まった。その結果、直営店の売り上げが急激に伸び始め、奇跡の復活を遂げたのだった。
そのため、「スカスカおせち事件」以前からいろいろ判断ミスによって自ら修羅場を作りつつ、社員に助けられて成功した人物と言えます。
「スカスカおせち事件」のまとめ
「スカスカおせち事件」は、「バードカフェ」や「グルーポン」のミスが重なった末に起こった事件です。
新しい新年の始まりに、お粗末なスカスカなおせちを受け取った利用客の心情を思うと本当に腹立たしいですよね。
「スカスカおせち事件」から10年以上経った現在、ネットでの商品購入はもはや日常の光景ですし、二度とこのような事件が起こらないよう、ルール作りを徹底してもらいたいものです。