2007年から2008年にかけて次々と不祥事を起こして廃業した高級料亭の「船場吉兆」が話題です。
この記事では船場吉兆が起こした一連の不祥事事件と、湯木佐知子さんの「ささやき女将」で話題になった釈明会見、ささやき女将の旦那や長男、店舗の場所や次男の現在などについてまとめました。
この記事の目次
船場吉兆は食品偽装事件などの不祥事を繰り返し破産廃業した高級料亭
船場吉兆は、2008年5月まで大阪や博多で経営されていた高級料亭ですが、2007年に食品偽装をはじめとする言語道断な不祥事を次々と起こして経営が傾き、約8億円もの負債を抱えて自己破産し廃業に追い込まれました。
今回は、その船場吉兆の不祥事事件と、当時大きな話題となった酷すぎる記者会見などについてを中心に紹介します。
船場吉兆の不祥事事件① 消費・賞味期限表示偽装事件
船場吉兆の度重なる不祥事事件について見ていきます。
船場吉兆は、2004年3月から福岡県福岡市の百貨店・岩田屋の本館地下2階に「吉兆天神フードパーク」を出店していました。
2007年10月28日、この「吉兆天神フードパーク」で販売されていたプリンやゼリー、ケーキなどの菓子類の売れ残った商品の消費期限、賞味期限などの表示シールを、店員らが毎日張り替えて偽装し、本来期限切れの商品をそのまま販売し続けていた事が発覚しました。
福岡市は28日、料亭や加工食品販売の「船場吉兆」(本社:大阪市)が営業する福岡市天神の岩田屋本館地下の「吉兆天神フードパーク」で、菓子類の消費期限を張り替え、期限の切れた商品を販売していたと発表。
福岡市による調査では、販売された商品の中には期限を2週間以上過ぎているものもあった事なども判明しています。
百貨店・岩田屋の担当社員は2004年の出店当初からラベルの管理はずさんだったようだと事件当時の会見で明かしています。
船場吉兆は責任を全てパート店員に押し付けようとした
この「吉兆天神フードパーク」の消費・賞味期限偽装が報じられると、あろう事か船場吉兆は、偽装は店舗パート従業員が勝手にやった事で、経営陣は関与していないと主張しました。
しかし2007年11月14日、責任を押し付けられたパート従業員ら4名が会見を開き、店長の湯木尚二取締役(創業者次男)から「期限を1ヶ月延ばして売れ」と直接指示を受けてシールの張り替えを仕事として行っていた事などを証言しました。
女性らは会見で「期限シールの張り替えは仕事の一部だった」と証言。パートの1人は「現場責任者が期限まで14~15日となったちりめんの扱いを湯木取締役に電話で尋ねた際、受話器越しに『そんなん、日持ちするんやで。1カ月くらい延ばせ』と大きな声で言うのが聞こえた」と話した。
さらに、この偽装事件が発覚した後の2007年10月31日と11月1日の夜、「吉兆天神フードパーク」の現場責任者(パート契約の40代女性店長)が、福岡市博多区で経営されていた「吉兆博多店」に呼び出され、「商品管理をしていたのは現場責任者」とする内容の書類に署名捺印するように求められた事などもこの会見で明かされています。
この女性が署名捺印を拒否すると、湯木尚二取締役は「やったのはあんたやないか」、「それは言い訳や」などと怒鳴り、2時間にわたって深夜まで説得し続けたという事でした。
10月31日と11月1日の夜、船場吉兆が同市博多区に開いている日本料理店「吉兆博多店」で、湯木取締役らから、「商品管理をしていたのは現場責任者」という内容の「事故報告書」に署名を要求されるなどしたことを明らかにした。両日とも2時間程度、深夜まで説得されたが、署名などを拒否したという。「拒否すると、『やったのはあんたやないか』などと怒鳴られた。
2007年12月10日に開かれた会見で、船場吉兆の取締役らはこの件について、「従業員の独断や判断はあったのか?」との記者からの質問に対して、湯木佐知子取締役(「吉兆」創業者の娘で「船場吉兆」創業者の妻)は、「ございません」と答え、「一切なかったのか?」という確認の質問にも「はい」とはっきり答えています。
つまり、船場吉兆は当初パートの従業員に全責任を押し付けて逃げ切ろうと企てていたという事でしょう。
船場吉兆の不祥事事件② 食材・食品の産地偽装事件
船場吉兆が「但馬牛」と偽装表示していた贈答品
2007年11月、今度は、大阪市中央区の船場吉兆本店でも、食材の産地を偽装して販売してた事が判明しました。船場吉兆本店は、佐賀県産の和牛を「但馬牛」と偽装、ブロイラー(若鶏)を「地鶏」と偽装して販売していました。
この偽装が発覚した時も船場吉兆の経営陣は、当初「業者が地鶏と偽って納入した、業者に裏切られた」などと発言しブロイラーを卸していた老舗鶏肉専門店に責任を押し付けようとしました。
しかし、業者は「うちは地鶏とは一言も言っていない。店にも若鶏専門店と書いている」とし、船場吉兆の主張に全面的に反論し、農水省が調査したところ、取引伝票にも「地鶏」という表記はどこにもなかったという事でした。
船場吉兆の不祥事事件③ 客の食べ残し料理使い回し事件
船場吉兆は2007年10月から11月にかけて発覚した食品偽装事件後、全店舗の営業を停止しましたが、2008年1月16日に民事再生法適用を申請し、湯木佐知子取締役以外の役員全員が引責辞任した上で、湯木佐知子取締役が新たに社長に就任し1月22日に本店の営業再開していました。
しかし、そんな矢先の2008年5月2日、今度は船場吉兆本店が2007年11月の営業停止の前まで、客の食べ残した料理を他の客に再び出していたという耳を疑う事実が判明します。これは前社長の湯木正徳氏(湯木佐知子取締役の旦那)の指示だったようです。
高級料亭「船場吉兆」(大阪市中央区)=民事再生手続き中=は2日、昨年11月の営業休止前まで、本店の料亭で客の食べ残した食事を別の客に再び出していたことを明らかにした。湯木正徳前社長(74)の指示で、はしをつけていない料理などを「もったいない」として使い回していたという。
船場吉兆本店では、6〜7年前(2002年〜2001年頃)から、客が手をつけていないと判断した食事を残しておき、食材が不足した時などに再び温め直すなどして、別の客に他の客とは食べ残しとは黙って提供していたそうです。こうした使い回し行為は2〜3週間に1度の頻度で繰り返されていたという事でした。
また、本店の他に博多店でもこうした使い回し行為が行われていたようです。
湯木佐知子社長はこの食事使い回し事件が発覚すると、これは「食べ残し」ではなく「手付かずのお料理」なので少しニュアンスが違うと主張されていました。
この使い回し事件が発覚した結果、船場吉兆には予約のキャンセルが殺到。これにとどめを刺される形で、船場吉兆は2008年5月28日に廃業に追い込まれたのでした。
船場吉兆の記者会見で「ささやき女将」と笑いのネタにされた女将・湯木佐知子
出典:https://www.tv-asahi.co.jp/
船場吉兆は次々と発覚する食品偽装事件により、2007年12月10日に釈明会見を開いています。
この会見には、当時の船場吉兆取締役社長で、長男の湯木喜久郎氏(当時45歳)と、その母親の湯木佐知子取締役(当時70歳)が弁護士と共に出席したのですが、長男の喜久郎氏が記者からの質問の回答に窮すると、隣に座っていた湯木佐知子取締役がささやき声でいちいち模範回答を教え、長男・喜久郎氏がそれをそのまま繰り返すという衝撃的な光景が展開され大きな話題となりました。
湯木佐知子取締役は、この会見で長男の喜久郎氏の横に座り、記者からの質問のたびに「(お客を欺く意識はなかったか?という質問に)ない、ないよ」、「頭が真っ白になったと(言いなさい)」、「大きい声で、目を見て」、「しっかり言わんかい」などとその都度長男に向けてささやきました。そして、この湯木佐知子取締役のささやき声は全てマイクに拾われ、会見の中継でまる聞こえにになっていたのです。
この会見の様子があまりにもおかしかったため湯木佐知子取締役は以降、「ささやき女将」と揶揄される事になりました。
ささやき女将・湯木佐知子取締役は、2018年にテレビ出演し、当時のささやき会見について「まさかまる聞こえになっているとは思わなかった」とマイクの性能を甘く見ていたのが原因だった事を明かしました。
船場吉兆の食品偽装については言語同断である事はいうまでもありませんが、この「ささやき女将」のネタについては、当時かなり面白おかしく報じられ、お笑いコンビ「爆笑問題」が漫才のネタにしたり、ビートたけしさんが「あれをやられたら敵わない」とお笑いのネタとして高く評価されたりもしていました。
現在も、この「ささやき女将」については船場吉兆の食品偽装事件とは切り離された形で、ネット上では人気の高いネタになっています。
船場吉兆の食品偽装を指示したのはささやき女将の旦那の湯木正徳氏だと見られている
船場吉兆の食品偽装や、食べ残しの食事の使い回しなどを最初に指示し、一連の不祥事事件の原因となったのは、ささやき女将・湯木佐知子さんの旦那の湯木正徳氏だったそうです。
この旦那の湯木正徳氏は、船場吉兆の創業者で、元々は、ささやき女将の父で和食料理の神様とも称される湯木貞一氏が創業した高級料亭「吉兆」の板前を務めていた方です。
ささやき女将の旦那の湯木正徳氏と長男の喜久郎氏は、2008年4月に不正競争防止法違反の容疑で書類送検されています。大阪府警は、食品偽装を指示していたのはこの湯木正徳だったとの見解を示しています。
府警は、前社長が偽装を指示し、肉の仕入れを担当していた喜久郎前取締役が従ったとみて、すべて九州産牛に切り替えた07年1月以降の偽装分について立件する方針。
船場吉兆の会見でささやかれた長男・湯木喜久郎氏も話題~現在は別の仕事に
船場吉兆の釈明会見で、ささやき女将と揶揄された母の湯木佐知子さんにささやかれた長男の湯木喜久郎氏も話題になっています。
当時45歳だった長男・湯木喜久郎氏は、このささやき女将会見の後、「いい大人が母親に助言を受けないと質問にも答えられないのか」などと、かなり批判的な声が多く上がっていました。
ささやき女将の次男の湯木尚二氏によれば、この会見の後に長男・湯木喜久郎氏は母の湯木佐知子さんにかなり怒っていたそうです。
会見の後に、兄は母に向かって怒っていましたね。「あんなこと(ささやき)をしなくても大丈夫だったのに!」と。
この長男・湯木喜久郎氏は現在は料理関係の仕事ではない全く別の業種の仕事をされているそうです。
船場吉兆の現在① 事件後に店舗は全て閉店し本店の場所は駐車場に
船場吉兆は食品偽装事件の後、廃業となり全店舗を閉店し現在営業している店舗はありません。
船場吉兆本店のあった場所は「大阪府大阪市中央区北久宝寺町」ですが、現在、この場所は駐車場になっているようです。
船場吉兆の現在② 次男の湯木尚二氏は懐石料理店を開業し複数店舗を経営
船場吉兆の次男で、当時、賞味期限・消費期限偽装事件のあった「吉兆天神フードパーク」の店長を務めていた湯木尚二氏は、現在は大阪北新地で「日本料理 湯木本店」という懐石料理店を経営されています。
2015年の時点では、この本店と、「日本料理 湯木新店」、「ゆきや」の3店舗を経営されているようです。
湯木尚二氏の店の場所は、本店と新店が大阪市北新地で、「ゆきや」が大阪市肥後橋だという事です。
まとめ
今回は、2007年から2008年にかけて食品偽装などの不祥事事件を繰り返し世間を騒然とさせた高級料亭「船場吉兆」についてまとめてみました。
船場吉兆は、消費期限・賞味期限のシールを張り替えて偽装して販売していた事件の発覚を皮切りに、産地を偽って牛肉や鶏肉を高額で販売していた食品偽装や、客の食べ残した食事を使いまわして、別の客に提供していた事件など、次々と不祥事が発覚し、2008年5月に廃業に追い込まれました。
一連の事件を受けての釈明会見では、女将の湯木佐知子さんが、長男で当時の社長の湯木喜久郎氏の横で、ささやき声でいちいち模範回答を指示する様子が話題となり、「ささやき女将」などとネタにされて大きな話題になりました。
現在は、船場吉兆の全店舗は閉店し本店のあった場所は駐車場になっていますが、次男の湯木尚二氏が新たに大阪北新地などで懐石料理店を経営されているようです。