AV機器メーカーの老舗「船井電機」が突如として破産を発表し大きな騒動となっています。
この記事では船井電機破産発表までの経緯、社員の年収や創業者の船井哲良氏と死因、前社長の上田智一氏が告発したやばい倒産理由の真相とミュゼ買収騒動、ヤマダ電機の対応や現在についてまとめました。
この記事の目次
船井電機の突然の破産が報じられ不可解な資金流出が判明し大きな騒動へ
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2024年10月24日、60年以上の歴史を持つ老舗AVメーカーで2021年に買収されるまで東証一部(現在のプライム及びスタンダード)にも上場していた大手企業「船井電機」が東京地裁から破産手続き開始の決定を受けた事が報じられました。
船井電機は1951年に船井哲良が創業した国内AVメーカーの老舗
「船井電機」は、1951年に船井哲良氏が創業した老舗AV機器メーカーでした(船井電機の設立は1961年)。個人経営のミシンの卸問屋「船井ミシン」ミシン事業から始まり、ラジオやテレビなどの家電製品事業へと進出。1970年代以降はOEM(他社ブランド向けの製品製造)を中心とした事業展開で急成長し、北米市場でシェアを拡大して「世界のFUNAI」と呼ばれました。
船井哲良の死去後に経営再建が上田智一氏に託される
船井電機は2010年代から経営の悪化が深刻化し始め、2012年3月期〜2018年3月期まで連続の営業赤字を出し、2016年3月期からは3期連続で営業キャッシュフローがマイナスとなり、追い打ちをかけるように精神的支柱であった創業者の船井哲良氏が2017年に死去。
船井哲良氏は死去の直前の2016年10月に経営再建を模索し、2017年には家電量販店最大手のヤマダ電機との提携契約を実現し、これが会社の利益を下支えし、2020年は新型コロナ禍でのいわゆる「巣ごもり需要」がプラスに働き、4〜6月期の黒字化を達成しましたが、通期では赤字となり、経営の抜本的な改善には至りませんでした。
そして、創業者の船井哲良氏の死去後に船井電機の株式を相続した長男の船井哲雄氏(医師で船井電機の経営には関わっていない)が、相談役の板東浩二氏の紹介で秀和システムの会長兼社長の上田智一氏に経営再建を託す事を決め、2021年に船井電機は秀和システムの完全子会社である秀和システムHDにTOBにより買収され、上田智一氏が新たに代表取締役社長に就任しました。
脱毛サロンを展開するミュゼプラチナムを買収するも1年で売却
社長に就任した上田智一氏は事業の多角化を掲げ、2023年4月に脱毛サロン「ミュゼ」を展開するミュゼプラチナムを買収し美容事業への進出を試みました。
ところが、このミュゼプラチナムの経営状況がかなり悪くアフィリエイト広告を委託した「サイバー・バズ」への報酬の支払いが滞る事態が発生。船井電機HDはミュゼプラチナムを2024年3月29日にKOC・JAPANへと売却しています。
ミュゼプラチナムからの報酬未払い状態が続いていたサイバー・バズは、2024年5月2日付で船井電機を債務者として株式の仮差押命令申立を行い東京地裁から決定の発令を受けて、10月3日までに9割超の船井電機株を差し押さえました。
上田智一氏が船井電機の経営権をファンドに1円で売却し社長退任
2024年9月27日、上田智一氏は保有する船井電機の株式をEFI株式ファンドに僅か1円で売却し経営権を譲渡し社長を退任します。
この際の契約には、上田智一氏が船井電機から借りた11.7億円の債務免除、役員在任中の責任追及放棄などの特約が含まれ、条件次第で上田氏が1円で船井電機の株式を買い戻せる条項が盛り込まれていたという事です。
船井電機が突如として破産を発表
上田智一氏が電撃的に社長を退任してから僅か1ヶ月後の2024年10月24日、船井電機は突如として破産を発表。同日に社員が大阪本社に集められ、代理人弁護人より「破産です。給料は払えません。即時解雇です」との通告がなされました。
船井電機から約300億円もの不可解な資金流出が判明
船井電機の破産が発表された後、同社が2021年に上田智一氏の秀和システムに買収されて以降約300億円もの資金が流出していた事が判明し、不可解な資金の動きがあるとして物議を醸しています。
2021年3月末時点で船井電機には約347億円の現預金がありましたが、破産申立てをした2024年10月の時点でほぼ尽きているという有様でした。
船井電機の年収【年齢別・業種別ごとの平均金額】
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船井電機は2024年10月に破産を発表し従業員に対して解雇と給与の支払い不能を通告しました。この事から、船井電機の社員の年収がいくらくらいだったのかにも関心が集まっているようなので年齢別・業種別ごとの平均年収を見ていきます。
船井電機の年齢別平均年収は以下の通りです。
- 25~29歳:約484万円
- 30~34歳:約500万円
- 35~39歳:約544万円
- 40~44歳:約552万円
- 45~49歳:約659万円
- 50~54歳:約633万円
- 55~59歳:約839万円
船井電機の業種別の平均年収は以下の通りです。
- 営業系(営業、MR、営業企画 他):約895万円(平均年齢44.7歳)
- 企画・事務・管理系(経営企画、広報、人事、事務 他):約720万円(平均年齢44.0歳)
- IT系エンジニア(アプリ開発、ITコンサル 他):約544万円(平均年齢40.0歳)
- 電気・電子・機械系エンジニア(電子・回路・機械設計 他):約529万円(平均年齢40.6歳)
船井電機の創業者は船井哲良で2017年に90歳で他界…死因は肺炎と発表
船井電機の創業者・船井哲良のプロフィール
生年月日:1927年1月24日
没年月日:2017年7月4日(90歳没)
出身地 :兵庫県神戸市
船井電機の創業者の船井哲良氏は1927年に兵庫県神戸市で生まれ、1943年に神戸村野工業学校卒業後、家業のミシン販売業を手伝うようになり、1947年に有限会社東洋ミシン商会に入社。24歳だった1951年に独立して個人商店「船井ミシン商会」を設立しました。
1959年に船井ミシン商会を「船井軽機工業株式会社」に変更しトランジスタラジオの生産を開始し、この部門を1961年に分離独立させて「船井電機株式会社」を設立しました。
以降、本格的に家電業界に参入して卓越した経営手腕を発揮し、一代で「船井電機株式会社」を世界的企業にまで成長させました。
船井哲良氏は2016年に代表権のない相談役に就任して名目上経営から退いた後も、ヤマダ電機との提携を主導するなど実質的には晩年まで経営の実権を握っていましたが、2017年7月4日に90歳で死去。死因は「肺炎」と発表されました。
船井電機の創業者で取締役相談役の船井哲良(ふない・てつろう)氏が4日、肺炎のため死去した。90歳だった。
船井電機の倒産理由① ミュゼの買収や貸付による資金繰りの悪化か
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船井電機の倒産理由ははっきりとはわかっていませんが、2021年の脱毛サロン経営「ミュゼプラチナム」の買収や、経営が悪化していた同社への支援のための資金援助により、資金繰りの悪化に拍車をかけたとする見方が有力とされています。
ミュゼプラチナムは大規模な広告キャンペーンを展開して急激に事業を拡大していたものの、同業との競争の激化から事業拡大に翳りが生じるとサービスの解約が急増しており、船井電機が買収した頃にはすでに深刻な財務問題を抱えていました。
結果として、船井電機はその尻拭いをせざるを得ない状況となり、財務悪化が加速して多額の負債を抱える原因となりました。
船井電機の倒産理由② 前社長の上田智一が真相は役員Kの不正送金と告発
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船井電機の倒産理由は、前社長の上田智一氏が既に経営の悪化していたミュゼプラチナムを買収した事だとする見方が有力とされていますが、上田智一氏はそれを否定しています。
前社長の上田智一氏は、「週刊文春」(2024年12月26日号)の取材を受けて、船井電機倒産理由はある役員による不正な資金支出を隠すためだとするやばい真相を告発しています。
船井電機倒産理由のやばい真相① 準自己破産は船井秀彦氏が単独で申し立て
船井電機は2024年10月24日に「準自己破産」の申し立てにより破産手続きの開始が決定されました。この順自己破産の申し立ては、取締役の役員が単独で申告できるもので、2023年3月に役員に名を連ねたばかりの船井秀彦という人物によって申し立てが行われました。
この役員の船井秀彦氏は、創業者である船井哲良氏のいとこの孫にあたる人物で、創業家との直接の血のつながりはなくこれまでに船井電機の経営に関わった事もないという事です。
船井電機倒産理由のやばい真相② 前社長の上田智一氏が文春で役員K氏を告発
船井電機の破産発表後、倒産理由はミュゼの買収などに伴っての約300億円もの不可解な資金流出だとし、その責任はそれを主導した前社長の上田智一氏にあるとの報道が盛んに流れました。
上田智一氏は「週刊文春」(2024年12月26日号)で、それは事実と異なるとの主張を展開しています。
船井電機倒産理由のやばい真相③ 役員K氏は創業家と親密で社内で強い影響力
船井電機倒産理由のやばい真相④ K氏による不適切な送金の内容
前社長・上田智一氏は「週刊文春」(2024年12月26日号)で役員K氏による不適切な送金の内容もかなり詳細に明かしています。
上田智一氏によると、2024年2月に売主を船井興産(船井電機の子会社で創業家の資産管理会社)とする約87億円の不動産売買があり、K氏は船井興産と契約関係にないA社に約2億円を取引手数料として振り込むように指示したという事です。
上田智一氏によれば、K氏はA社が不動産売買に関する指南の業務を行う対価として売却額のおよそ2パーセントを支払う契約書を作成させたが、実際には契約は締結されずA社にはこの報酬を受け取る権利はありませんでした。しかし、K氏は「上田社長も承認済みだから」と経理担当者を騙して2億円をA社に送金させたという事です。
船井電機破産発表後のヤマダ電機の影響と対応
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弊社と業務提携関係にある船井電機株式会社が、10月24日付で破産手続き開始決定を受けたとの報道がありました。 これを受け、弊社としましては、船井電機株式会社の今後の動向を注視してまいります。 また、これまでに販売したFUNAIブランド製品のアフターサービスについては、お客様にご迷惑をおかけすることの無いよう販売店として責任をもって対応してまいります。
ヤマダデンキの社員は、「当面は安売りすることはないとみています」として在庫処分を急ぐ可能性は低いとの見解を示す。
「船井電機は破産しましたが、船井電機の子会社でFUNAI製品のアフターサービス及びELS事業を行う船井サービスは経営を続けていますし、今後もサービスを継続していくとのことなので、ヤマダデンキとしても特に大きな変更はないと思います」
船井電機の現在…民事再生法の適用が申請され会社再生の可能性も
船井電機の現在の状況について見ていきます。
船井電機は2024年10月24日に東京地方裁判所から破産手続き開始の決定を受けましたが、その後の展開は複雑な状況となっています。
破産手続き開始が発表された当日の午後には緊急説明会が開かれて従業員約2000人に対して解雇と給料が支払えない事が通告されました。
同年10月29日には、10月2日までに代表取締役会長に就任したばかりだった原田義昭氏(元環境大臣)が、破産開始決定の取り消しを求めて東京高裁に即時抗告を申し立てました。
さらに、原田義昭会長は12月2日に東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。
原田義昭会長は12月11日にテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の取材に応じ、船井電機は破産まで行くような状況でないとし、船井電機単体では117億余りの債務超過とされているがグループ全体で見れば資産は200億円ほどプラスであると説明されています。
「(船井電機の収支は)黒字ではないが、破産までいくようなレベルではない」(原田氏) 「現在はどれぐらいの資産が残っているのでしょう」(大江キャスター) 「(船井電機グループ全体で)200億円ぐらい資産が評価されている」(原田氏) 破産管財人によると、船井電機単体では117億円あまりの債務超過と言いますが原田氏はグループ全体で考えれば、資産は逆に200億円ほどプラスだと主張します。
仮に、裁判所が民事再生法の適用を決定する判断を下せば、船井電機は再生される可能性があります。
しかしそうなったとしても、すでに船井電機は全社員に解雇を通告しており、現在すでに多くの社員が転職活動に移っている状態で、人材がほとんど流出した状態でリスタートを切る事になり、かなり厳しい状況に置かれているのは間違いありません。
まとめ
今回は、2024年10月24日に突如として破産を発表したAV機器メーカーの老舗「船井電機」についてまとめてみました。
船井電機の社員の年収は概ね400万円台〜800万円台の中堅のAV機器メーカーで、一時は北米にシェアを獲得して「世界のFUNAI」とも呼ばれました。
船井電機の創業者は船井哲良氏で、ミシンの卸売販売店から事業を拡大して「船井電機」を設立し一代で世界的企業としましたが、2010年代頃から経営の悪化が深刻化し2016年にはヤマダ電機との業務提携を結ぶなど再起を図るも叶わず、2017年に船井哲良氏が90歳で死去(死因は肺炎)した後、2021年に秀和システムという会社にTOBにより買収されました。
しかしこの買収後、社長に就任した上田智一氏が経営再建の施策として脱毛サロン経営「ミュゼプラチナム」を買収したところ、このミュゼが深刻な経営難状態に陥っており、それに巻き込まれるような形で船井電機の資金繰り悪化に拍車がかかり、これが今回の倒産理由になったとの見方が有力です。
一方、上田智一氏は倒産理由はある役員による不適切な資金支出があり、この役員らがその不正を隠すために強引に船井電機を破産させようとしているとする、かなりやばい倒産理由の真相を週刊文春などで告発しています。
2024年10月に船井電機の代表取締役会長に就任したばかりであった原田義昭氏も破産手続きの開始決定に反対し、2024年12月2日に東京地裁に民事再生法の適用を申請しており、現在は裁判所の決定を待っている状況です。