2011年10月11日に滋賀県大津市内の中学校で起きた「大津市中2いじめ自殺事件」ですが、「いじめ防止対策推進法」が制定されるきっかけとなりました。
この記事では、加害者・被害者の関係など事件の内容や、その後現在までの経緯について詳しくまとめました。
この記事の目次
「大津市中2いじめ自殺事件」の概要
大津市立皇子山中学校生徒がいじめを苦に自殺【2011年10月】
学校側がいじめを隠そうとした隠蔽体質が問題視された事件
滋賀県大津市内にある市立皇子山中学校に通う中学2年生の被害者少年(当時13歳)は、事件直近となる2011年9月29日に同級生らから体育館にて鉢巻で手足を縛られ、口を粘着テープで塞がれるなどし、同年10月8日には被害者少年の自宅におしかけて貴金属や財布などを盗みました。
そうしたいじめが日常化しており、いじめを苦にしていた被害者少年は加害者少年らに自殺をほのめかすメールを送りましたが、それらは完全に無視されました。
被害者少年は同月11日に自宅のマンションから飛び降りて自殺をしました。
「大津市中2いじめ自殺事件」加害者少年に反省の色なし
加害者少年は被害者少年死後も全く反省していなかった
加害者少年らは被害者少年が亡くなった後も写真に穴を開けたりラクガキをしたりと全くことの重大さも反省の色も見せていませんでした。
学校でのいじめ問題はこの「大津市中2いじめ自殺事件」以外にもありましたが、この事件がとりわけ注目された理由は、自殺した生徒が通っていた中学校の校長をはじめ教育委員会がいじめを無かったことにしようとした隠蔽体質でした。
いじめを苦に自殺した生徒の名誉を守ることよりも、保身に走った学校の対応は大きな波紋を世間に広げ、翌年に「いじめ防止対策推進法」が施行されるきっかけとなりました。
被害者少年と加害者少年は元々仲がいい友達同士だった
被害者少年は2011年春に中学2年生に上がると、加害者少年3人のうち2人とクラスメートになり、昼ご飯を一緒に食べたり花火大会に行くなどしばらくは友達として交友していました。
しかし、2学期に入ると加害者少年らから首を絞められたり、弁当を隠されたりと、いじめとまではいかないまでもイジられる関係になっていきました。
その”イジり”は次第にエスカレートしていき、遊びと称して顔にラクガキをしたり、殴る蹴るの暴行を加え始めたことで自然と友情は崩壊し、いじめる側といじめられる側に完全に分かれました。
「大津市中2いじめ自殺事件」被害者少年が受けたいじめ内容
極秘校内アンケートから酷すぎるいじめの実態が明らかに
校長や大津市教育委員会は事件が明るみになった当初、いじめと自殺の因果関係は無かったとして「生徒同士の喧嘩」で片付けようとしましたが、極秘で行われていた校内アンケートでは明らかにいじめられていた事実が多数回答されていました。
アンケートで寄せられた回答の中には以下のようないじめを示唆する内容が多数挙がっていました。
・トイレで殴られていた
・お金を要求されていた
・万引きさせられていた
・トイレで殴られていた
・ハチの死骸を無理やり食べさせようとしていた
・「お前の家族全員死ね」など暴言を吐いていた
・顔にラクガキされていた
なお、加害者少年も当然このアンケートを答えており、その内容は「死んだと聞いて笑った」「死んでくれて嬉しい」など反省した様子は微塵もなく、人ひとりを自殺に追い込んだという自覚は全くない様子でした。
これだけのいじめを証明する材料が揃っておきながら、市教育委員会や学校側は事実関係は認められないとしてアンケートの公開を控え、会見では「いじめと自殺の因果関係は認められなかった」と回答しました。
被害者少年は祖母にいじめについて打ち明けていた
被害者少年はおばあちゃん子だったことから度々祖母に「自殺したい」と心の内を漏らすようになり、加害者少年らから金銭の要求をされ始めるとその大部分は祖母がかわいい孫のために渡していました。
加害者少年らのいじめから逃れるように被害者少年とは他の生徒と昼食を取るなどして距離を置こうとしましたが、それに憤慨した加害者少年らは自宅におしかけてきて財布や時計を盗みました。
そうしたいじめに限界を感じた被害者少年とは、担任の先生に涙ながらに電話で相談したものの相手にされなかったため、その6日後に自殺してしまいました。
「大津市中2いじめ自殺事件」あまりにも酷すぎる学校側の対応
校長のふてぶてしい記者会見に非難の声が殺到
会見で酷すぎる対応をした校長
校内アンケートの内容は被害者少年の遺族にも伝えられましたが、マスコミに漏れるのを恐れて「部外秘」の誓約書にサインをさせるなど、遺族の心情を逆なでするような対応をしていました。
アンケートを受け取った遺族はさらに詳しい事実が知りたいと学校側に伝えたため、2回目の校内アンケートが実施されましたが、「自殺の練習をさせられていた」など新たないじめを決定づける内容が含まれながら、学校側は「新しい事実は確認されなかった」と嘘を報告しました。
学校側は事件発生当初、「加害者にも人権がある」という理由で校内での聞き取り調査を拒否していました。
被害者少年が自殺する6日前に担任に相談があったことは認めましたが、「生徒同士の喧嘩」と結論づけて対応をせず、さらに「いじめられた原因は家庭環境にあった」と遺族側に責任を転嫁する発言をして世間からバッシングを浴びていました。
校長のふてぶてしい記者会見もあり、学校側は早々に幕引きしようと図ったつもりが、逆に国民感情を逆なでしてしまい、いじめ事件において最も問題のある事件として扱われるようになりました。
担任教諭は保護者説明会にも出席せず長期休職
被害者少年は自殺する6日前に担任に電話で泣きながらいじめがあったことを訴えましたが、担任は対応することなく放置していました。
被害者少年が自殺して事件化すると担任は2013年3月まで長期休職を申し出て、保護者説明会にも出席せず逃げてしまいました。
担任は市教育委員会や第三者委員会の聞き取り調査にも満足に応じず、遺族への謝罪も追悼の言葉もありませんでした。
もし担任が生徒を全力で守る姿勢を見せていれば、被害者少年は自殺せずに済んだことでしょう。
警察も遺族の訴えをまともに取り合わなかった
遺族は暴行事件として警察に被害届を出しましたが、滋賀県警は「被害者が自殺しているため受理できない」と取り合いませんでした。
そして、大津署は遺族が3度にわたり暴行容疑などで被害届を提出したにもかかわらず「被害者本人が自殺して存在しない」などとして、いずれも受理しなかった点も暴かれ、滋賀県警も批判を浴びた。
男子生徒の父親は後に、暴行、恐喝、強要、窃盗、脅迫、器物損壊の6つの容疑で「告訴状」を提出し、ようやく受理された
いかに当時学校でのいじめが事件として軽視されていたかがわかる警察の対応ですが、いじめ問題を軽視する学校や警察への世間の批判が高まったことから国を動かし、「いじめ防止対策推進法」が成立する後押しとなりました。
「大津市中2いじめ自殺事件」の裁判…加害者側に3750万の賠償命令
異例の証拠件数となった裁判
いじめ訴訟では異例の証拠の多さから完全勝訴
公判当初、被害者少年の遺族の訴えに対し、加害者少年らはいじめと自殺の因果関係を認めず否定を続けていましたが、それが後に情状を悪くすることになり完全敗訴に繋がりました。
争点はいじめと自殺の因果関係。遺族側は自殺直前にいじめがエスカレートした経緯や内容の苛烈さなどから、「男子生徒に加えられた激しいいじめが自殺につながった」と指摘したのに対し、元同級生側は行為の一部を認めながらも、「遊びのつもりだった」などとして「いじめ」や「いじめと自殺との因果関係」を否認している。
いくら加害者少年らがいじめの事実を認めなかったとしても、被害者少年の遺族が集めた校内アンケートの目撃情報など500点以上の証拠を提出していたことから、いじめ訴訟としては異例の判決を迎えることになります。
訴訟をめぐっては、元同級生の行為の一部が県警の捜査対象となり、事件記録が作成されたことなどから、遺族側はいじめ訴訟では類を見ない500件近い証拠を提出。大津市が設けた第三者委員会の報告書に基づき、市も「男子生徒がいじめを受けており、自殺に至る可能性のある精神的苦痛を受けていた」として、訴訟で自殺といじめの因果関係、責任を認めて和解している。この点を、地裁がどう判断するかも焦点となる。
訴訟では、29年秋に元同級生3人が尋問され、初めて公開の法廷で事件について証言。3人はいずれも「傷つけた認識はない」「覚えていない」など、いじめを否定したが、1人は「生きていれば謝りたいことはある」とも述べた。
いじめ訴訟において重要となるのが、いじめ被害者が自殺する可能性を加害者側が予見していたかどうかを立証することですが、このいじめ問題は事件化していたこともあり、検察は「多くの状況証拠から自殺は容易に予見できた」とし、「自殺は特殊な事情によるものではなく、加害者らが自殺を予見していたかの有無に関わらず賠償責任がある」と述べました。
加害者少年2人に賠償命令 いじめとの因果関係認定へ【2019年2月】
検察側の主張の正当性や、加害者少年らがいじめと自殺の因果関係を否定し続け、反省の色がないことから情状酌量の余地はなく、大津地裁は遺族側の賠償請求額3850万円に対して、3750万円というほぼ満額になる賠償を加害者少年側に言い渡しました。
大津市で2011年、市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自殺したのはいじめが原因だとして、遺族が当時の同級生3人と保護者に計約3850万円の損害賠償を求めた訴訟で、大津地裁は19日、いじめ行為と自殺との因果関係を認め、元同級生2人に、請求のほぼ全額となる計約3750万円の支払いを命じた。西岡繁靖裁判長は「生徒の自殺の主たる原因は、2人の元同級生の行為にあったと優に認められる」と判断した。
いじめが自殺の原因となったと認めた裁判はこの事件が初めてであり、以後のいじめ訴訟に大きな影響を与えることになりました。
学校で起きた事件であることから加害者少年らの両親には監督義務が無かったとして、3750万円の賠償は加害者少年2人が行っていくことになります。
毎月自動的に給料から10万円を差し押さえたとしても、全額返済するまでに約16年かかりますが、未来を奪われた被害者少年の人生に釣り合うかと考えると全く釣り合わないでしょう。
被害者少年の祖母が悲しみを語る
最愛の孫を失った祖母の悲痛な思い
被害者少年の祖母はマスコミに何も言わないように言われていたようですが、その僅かな言葉の端々にも最愛の孫を失った深い喪失感が伝わってくるようです。
「近所の人は大変やなって心配してくれるけど、こうやって商売しないと生活でけへんから、仕方なしや。(マスコミには)なんにも言うなと言われてる。
先生がな・・・・・・、知っててな・・・・・・、なんであんなかわいそうなことに・・・・・・(肩を落として涙ぐむ)」
祖母は最愛の孫を失い、憔悴しきった様子で番台に座っていた。交替で銭湯に現れた祖父にも声をかけたが返事はなかった。つらいけれども、商売しないと生活ができない。切実さが伝わってくる姿だった。
引用:ムカつく相手はネットで写真公開、校門前で威嚇 大津いじめ自殺事件とネット社会の病理 いじめたヤツをいじめる、この国よ
いじめに関わらず身内を殺害された遺族の心情は共通であり、いくら賠償金を支払われたとしても2度と帰ってこない現実と死ぬまで向き合ってかなければなりません。
「大津市中2いじめ自殺事件」のその後…加害者少年がネットで特定される【山田晃也・木村束麿呂・小網健智】
ネット上では加害者への人権撤廃の声も
殺人事件が起こるたびに多くの人が「人の人権を無視して命を奪っておきながら、自分の人権を主張するのは筋違い」という思いに駆られると思いますが、この「大津市中2いじめ自殺事件」後もネット上でそうした声が多数上がっていたようです。
〈クズをはびこらせるな。奴らは同じ人間じゃない〉
〈屑の親の遺伝子から屑の子ができたんだな〉
〈加害者家族まじで追い込めや〉
〈犯罪者庇う国ってなんだよ。人の人権奪っといて自分の人権守ろうなんざ甘いんだよ〉
〈親も死ねばいいのに〉
引用:現代ビジネス – ムカつく相手はネットで写真公開、校門前で威嚇 大津いじめ自殺事件とネット社会の病理 いじめたヤツをいじめる、この国よ
とはいえ、日本の死刑制度は海外の人権派団体から批判され続けてきたこともあり、今後の日本の司法も海外基準に合わせるとして死刑撤廃に向かうと言われています。
どれだけ非人道的で存在する価値もないような犯罪者だとしても、「人が人を殺す」という死刑制度は形はどうあっても犯罪者が犯す”殺人”と同じであり、やはり終身刑によって人生の終える日までに悔い改めさせるというのが本来あるべき司法なのでしょう。
現在、加害者少年は身元特定されネットで糾弾されていた
加害者:山田晃也
加害者:木村束麿呂
加害者:小網健智
彼にだけ賠償命令は下らず
いじめ加害者のリーダー格だったのは山田晃也という人物で、小網健智、木村束麿呂の3人の特定が進められており、現在もこの「大津市中2いじめ自殺事件」を絶対に許さない何人かの人間により現在も情報が更新されているようです。
この内特に名前が特徴的な木村束麿呂は顔写真付きで身元や家族が特定されて晒されており、事件後は京都にある宇治市立広野中学校に転校したと言われていましたが、現在は国外逃亡しているという情報もあります。
山田晃也も京都の中学校に転向したと言われていましたが、小網健智は転校せずにいたもののネット上で住所が特定されたことから転校したと言われています。
なお、木村束麿呂は名前が特徴的で特定されやすいため改名したとも言われています。
木村束麿呂(きむらつかまろ)
— 大津市いじめ事件 (@yudN65nvapSlk5N) 2019年1月24日
同級生を自殺に追い込んだ最低な人間拡散してほしい!
こいつが犯した犯罪行為を忘れて欲しくない!
木村束麿呂は、許しちゃいけない!#拡散希望 #犯罪者 #大津市いじめ #大津市 #いじめ pic.twitter.com/rYronLY5FB
「大津市中2いじめ自殺事件」についてまとめると…
・裁判ではいじめによる因果関係を認定、加害者少年2人に3750万の賠償命令が下った
・加害者少年3人は身元が特定されており、現在も監視が続いている
滋賀県大津市の中学校で起きたいじめによる自殺事件「大津市中2いじめ自殺事件」について総まとめしてきました。
「大津市中2いじめ自殺事件」以降、学校側のいじめ問題に対する対応は確実に変わってきているものの、やはり定期的にいじめによる自殺が起きています。
海外の学校のようにスクールカウンセラーを常駐させるなど、まだまだ政府主導による対策は必要になってくるでしょう。