人気メディアミクス作品「ひぐらしのなく頃に」ですが、過去に少年犯罪の影響で放送中止騒動に巻き込まれたこともありました。
この記事では、「ひぐらしのなく頃に」の放送中止騒動と原因になった京都の「京田辺警察官殺害事件」の顛末と真相、その後の斧を使った少年犯罪の誘発や現在までを総まとめしました。
この記事の目次
「ひぐらしのなく頃に」とは
ひぐらしのなく頃に、2000年代にブームを巻き起こしたメディアミクス作品
「ひぐらしのなく頃に」とは、同人サークル「07th Expansion」制作の同名ゲームシリーズを原作としたメディアミクス作品となります。
・アニメ(テレビシリーズ3作 OVAシリーズ3作)
・漫画(本編全32巻)
・小説(全17巻)
・実写映画(2作)
・実写ドラマ(2作)
・舞台演劇(2作)
1983年6月の雛見沢村を舞台とした伝奇ミステリー作品である「ひぐらしのなく頃に」は、猟奇的な表現が多数含まれる内容だったのにも関わらず、萌え要素とサスペンスな展開が上手くマッチしていたため、2006年の初アニメ化を契機に一大ブームを巻き起こすことになりました。
単純にいうと、雛見沢村という山奥にある寒村で、夏祭りの夜を中心に連続怪死事件が起きていくという推理劇です。前半は中高生ぐらいの男の子や女の子たちの楽しい学園生活の話だったのが、後半になると一転して恐ろしい事件が起こる陰惨な展開になっていく。古い因習が残る閉鎖社会の中で猟奇的な事件が次々起きるという点では、横溝正史の「八つ墓村」などのテイストに近いですね。
とはいえ、あまりに世間に知れ渡りすぎた影響からか少年犯罪と結びつけられてしまい、メディアからバッシングを受けアニメの放送が中止に追い込まれたこともありました。
以降の項では、「ひぐらしのなく頃に」の放送中止騒動の詳細について紹介させて頂きます。
「ひぐらしのなく頃に」の放送中止騒動…きっかけは京都の少年犯罪「京田辺警察官殺害事件」だった
「ひぐらしのなく頃に」の放送中止理由となった「京田辺警察官殺害事件」とは?
それまで好調なメディアミクスが続いていた「ひぐらしのなく頃に」でしたが、2007年9月18日になると突如逆風が吹き荒れることになりました。
「ひぐらしのなく頃に」に吹き荒れた逆風のきっかけについては、京都府京田辺市で起こった「京田辺警察官殺害事件」でした。
同事件では、当時45歳の警察官・Aさんが、自宅で就寝中に次女に斧で襲われて斬殺されてしまうことになったそうですね。
2007年9月18日午前4時頃、少女は自宅2階の寝室で寝ていた父親の首を手斧で切りつけて失血死させた。午前4時40分頃、少女の母親が「父親が首を切って自殺した」と119番通報。消防からの連絡で田辺署員が駆け付けたところ、2階の寝室のベッドで血塗れで死亡していることが確認された。1階キッチンに手斧が落ちており、側にいた少女の服に返り血が付いていたため、署員が事情を聞いたところ犯行を認めたため、殺人容疑で緊急逮捕した
引用:京田辺警察官殺害事件
ちなみに、午前4時という早朝の犯行だったにも関わらず、次女・Bはパジャマではなく黒のワンピースを着て犯行に及んでいたと言われております。
京田辺警察官殺害事件、犯行動機は父親への強い憤りだった
16歳の若さで実父を斬殺することとなったBですが、引き籠りや不良少女といった問題児ではなく、漫画家を目指して京都府内の専門学校に通っていたそうですね。
Bが実父殺しに手を染めてしまった原因に関しては、幼少期よりAさんに厳しくしつけられていたことを恨んでいた他、事件数年前よりAさんが不倫をしていたことに嫌悪感を抱いていたと言われております。
そんなBにとって、「京田辺警察官殺害事件」を起こすトリガーとなった出来事が、専門学校への進学許可を得るためにAさんに頭を下げたことだったそうで、屈辱のあまり殺害計画を立てるきっかけとなりました。
京田辺警察官殺害事件、少女Bは竜宮レナをモデルにしていた?
16歳の少女が実父を斧で斬殺するといったショッキングな事件は、当然ながらマスコミにも大々的に報道されることになりました。
加熱する一方の報道の中では、Bが漫画家志望だったことからアニメや漫画の悪影響を指摘する識者も出てくることとなり、当時10代を中心に人気だった「ひぐらしのなく頃に」がやり玉に挙がっています。
数ある創作物の中で「ひぐらしのなく頃に」が悪玉扱いされた理由については、ワンピースを着た少女が斧で人殺しをするといったシチュエーションが、同作品のヒロインの1人である竜宮レナを連想させたことが原因でした。
その他にも、当時「ひぐらしのなく頃に」のアニメ第2期である 「ひぐらしのなく頃に解」が放送中だったことも風評被害を受けやすい立場だったと言えます。
ただし、作中で竜宮レナが愛用していた凶器はナタであったため、「ひぐらしのなく頃に」をヒントにBが「京田辺警察官殺害事件」を起こしたとの風説に対しては、「濡れ衣だ!」と反論するネットユーザーたちも少なからずいました。
京田辺警察官殺害事件、「ひぐらしのなく頃に」を放送中止に追い込む
「京田辺警察官殺害事件」のせいで生じたバッシング報道は、当時放送中だったアニメ「ひぐらしのなく頃に解」に大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありません。
深夜アニメにありがちな独立U局中心の放送をしていた「ひぐらしのなく頃に解」でしたが、報道圧力に負けて「テレビ埼玉」と「東海テレビ」がシリーズ中盤での打ち切りを決定しています。
「ひぐらしのなく頃に解」の放送局は下記の6つの独立U局だったため、バッシング報道のせいで視聴可能地域がだいぶ減ってしまったことになります。
・東海テレビ
・KBS京都
・テレビ埼玉
・チバテレビ
・サンテレビ
・テレビ神奈川
そのため、制作サイドも視聴不可能地域となってしまった視聴者のために、救済措置を講じることになりました。
打ち切られた局で本作を見ていた視聴者への救済措置として、当初は有料配信を行っていたインターネット動画配信サービスサイト・アニメイトTVが無料配信を行った。描写はすべて修正前である(2007年10月24日から31日にかけて第12・13話を、以降最新話を1週間限定で順次配信)。
「ひぐらしのなく頃に」を放送中止にさせた「京田辺警察官殺害事件」の顛末と真相とは?
京田辺警察官殺害事件、少女Bは中等少年院に送致されていた
逮捕後のBに関しては、取り調べに当たった京都地検からは「計画性と残虐性を考慮して刑事処分相当」との判断を下されました。
とはいえ、「京田辺警察官殺害事件」を担当した京都家裁は、下記の観点から家庭環境の問題がBを犯罪に走らせた遠因と判断し、中等少年院への送致に留めています。
・父・Aは家族に隠すことなく大っぴらに不倫を楽しんでいた。
・母親はBにAに対する愚痴を繰り返し、浮気相手の素性まで話していた。
京田辺警察官殺害事件の真相はギロチンからの連想だった
「京田辺警察官殺害事件」では、取り調べの結果、Bが「ひぐらしのなく頃に」に影響されて犯行に及んだとの風説が濡れ衣だったことも判明しています。
Bが凶器に斧を選んだ理由については、「興味を持っていたギロチンから連想した」との供述が存在するそうですね。
また、Bが犯行時に黒のワンピースを着ていた理由に関しても、中学時代からゴスロリファッションにハマっていたことが原因だったそうで、竜宮レナとはまったくの無関係だったとか。
ひぐらしのなく頃に解の放送中止って報道番組のデマで中止にせざるを得なかったんだね。
— K@ナルメア警察👮♀️ (@K____GBF) March 26, 2019
当時小2か小3だったし知るわけないわな。てかひぐらしのなく頃に自体知らんかったしな。あの頃見てたらトラウマ不可避
「ひぐらしのなく頃に」を放送中止にさせた「京田辺警察官殺害事件」の余波…長野で斧を使った少年犯罪を誘発していた
「京田辺警察官殺害事件」は模倣犯も生み出しています。
「京田辺警察官殺害事件」の影響を受けて発生してしまった少年犯罪事件については、2007年9月24日に長野県辰野町で起こった「長野父殺人未遂事件」です。
こちらの事件に関しては、自宅1階居間で眠っていた44歳の父親を15歳の息子が斧で殴りつけたといった騒動となります。
息子が狂行に走った理由については、父親の交友関係に悩んでいたところ、「京田辺警察官殺害事件」の報道を見て犯行を思いついたという話になっています。
「京田辺警察官殺害事件」とは違い、父親の命に別状がなかったことも手伝い、逮捕後の息子は初等少年院への送致で済んだそうですね。
「ひぐらしのなく頃に」…本当に読者が少年犯罪者だったケースも
「ひぐらしのなく頃に」は、「八戸母子殺害事件」の犯人がファンであったとの逸話も存在するようです。
こちらの事件については、青森県八戸市在住だった18歳の少年・Cが自身の家族3人を皆殺しにしてしまった騒動となります。
事件が発生したのは、2008年1月9日夜。青森県八戸市根城(ねじょう)のアパートの1室が焼け、焼け跡から3人の遺体が発見された。遺体で見つかったのは、この部屋に住む女性(43)と、中学生の次男(15)、長女(13)。遺体には、刺し傷と切り傷のような外傷が見つかったという。
ただですら衝撃な内容の事件であった「八戸母子殺害事件」でしたが、被害者の1人である母親の腹部が切り裂かれて中に人形が埋め込まれていたことから、猟奇殺人事件としても注目を集めました。
焼け残ったアパートより、Cの所有物である猟奇的な内容が含まれる漫画なども押収された「八戸母子殺害事件」ですが、その中に漫画版の「ひぐらしのなく頃に」も含まれていたとの報道がありました。
とはいえ、だからといってCが「ひぐらしのなく頃に」を参考に事件を起こしたというわけではなかったようで、シングルマザーであった母親の男性関係に悩んだ末の犯行だったようですね。
ちなみに、Cは2013年に最高裁にて無期懲役の判決が確定しているため、現在は服役中となります。
「ひぐらしのなく頃に」の放送中止騒動のその後の影響は?
ひぐらしのなく頃に、放送中止騒動のせいで第3期はOVA展開だった
アニメ「ひぐらしのなく頃に解」の放送中止騒動は、その後の「ひぐらしのなく頃に」シリーズのメディアミクスにも悪影響が出る形となってしまいました。
アニメ第2期の好評を得て制作された第3期「ひぐらしのなく頃に礼」は、それまでの2作とは違いOVA展開となってしまったそうですね。
その他、騒動前に既に企画されていたと思われる実写映画2作が2008年と2009年に公開されたことを最後に、メインストリームメディアでのメディアミクスの話題はしばらくの間途絶えることになりました。
「ひぐらしのなく頃に」の現在…コロナでの中止を心配する声も
「ひぐらしのなく頃に」の現在については、2020年10月より14年ぶりのテレビアニメシリーズとなる「ひぐらいのなく頃に業」が放送中です。
とはいえ、一度理不尽な中止騒動に巻き込まれてしまったファンたちの心の傷は深かったようで、作中に存在する雛見沢症候群(※極度の精神疾患のような症状を招く)が「新型コロナウイルスを連想させる!」と言いがかりをつけられないか心配する声も多い状況となります。
斧事件を連想するからと一度放送中止にされてしまった「ひぐらしのなく頃に」
— べーた@受験につき超絶低浮上 (@plus_learth_O13) May 15, 2020
今度のリメイクは、雛見沢症候群がコロナを連想させる、とか言われないといいな
ちゃんと内容を知ってれば感動物語だって分かるハズだけど
「真実の絆」「奇跡の起こし方」「信じる心」
むしろ今の人たちには必要な要素。
「ひぐらしのなく頃に」の放送中止騒動についてまとめてみると…
「ひぐらしのなく頃に」の放送中止騒動については、まったくの濡れ衣で作品がバッシングされた挙句、その後のメディアミクスに少なからず影響が出ることとなった騒動となります。
今後このような騒動が起こることがないことを祈りつつ、この記事のまとめを終了させて頂きます。