日本では都市伝説扱いもされている臓器売買の闇市場ですが、隣国中国では告発騒動も起こり、国際的な非難を浴びるほど現実的な話題となっています。
この記事では、臓器売買の値段やレート、生きたまま臓器抽出など中国での現状、そして日本での現状や関連事件をまとめました。
この記事の目次
中国の臓器売買ビジネスの現状…刑務所では生きたまま“臓器摘出”
2000年代前半頃より臓器移植大国に変貌
世界2位の経済大国である中国ですが、2000年代前半頃より臓器移植大国としても台頭して来ており、アメリカに次ぐ臓器移植手術数を誇る国へと変貌していました。
中国が臓器移植大国として台頭した理由については、アメリカの10分の1程度の費用で臓器移植が可能なリーズナブルさに加えて、必要な臓器を迅速に入手出来る体制が整っていることが大きかったようですね。
しかも、外国人患者向けの臓器移植のあっせん(売買)サイトが多数存在し、肝臓=1000万円~、腎臓=600万円~、心臓=1300万円~、角膜=300万円~などと臓器別の値段を明示し「若くて新鮮な臓器が、早ければ数週間以内に見つかる」などとアピールしている。
とはいえ、あまりに充実しすぎた中国の臓器移植手術体制に対しては、欧米諸国からは疑問の声もあがっていたとか。
2006年に臓器売買市場の闇が暴かれる
あまりに利便性の高すぎる中国の臓器移植手術体制ですが、2006年になると、闇があったことが判明します。
遼寧省蘇家屯の病院で神経外科医をしていた夫を持つアニーと名乗る中国人女性が、アメリカで告発した中国の臓器売買市場の実態については、フィクションの世界を超える恐ろしいものでした。
アニーさんの夫が勤務する病院では、地下に数千人ほどの中国人が監禁されており、必要に応じて薬物注射で仮死状態にした後で臓器を摘出し、近隣のボイラー室で焼却処分を受けていたようですね。
アニーさんの夫自身も3年間で2000件もの角膜摘出手術に携わっていたそうですが、良心の呵責に耐え切れずに妻に告白し、今回の告発へと至ったとか。
生きたまま臓器を摘出された被害者は法輪功信者や少数民族?
中国にて、生きたまま臓器を摘出されることとなった被害者たちに関しては、法輪功の信者たちや反体制運動に興じる少数民族など、中国共産党から「政治犯」や「思想犯」と認定された人間たちだったようですね。
カナダの人権活動家らが2016年6月に発表した報告書によると、「中国では年間6万から10万件も、受刑者からの臓器摘出が行われている」という。受刑者の多くは、中国共産党が「政治犯」「思想犯」と認定した、ウイグル族やチベット族、キリスト教徒、法輪功の信者などだ。
欧米からの批判を受けた中国共産党は、囚人からの臓器移植を段階的に中止する意向を発表しているようですが、数十憶ドル規模と言われている闇ビジネスだけに、状況は改善されていないとの噂も存在します。
実際の話、2017年になると、韓国の調査報道番組「セブン」の取材にて、中国で脳死マシーンと呼ばれる機械の開発が進んでいるとのスクープもありました。
こちらの機械の開発意図については、「被験者を脳死状態にすることで、臓器の鮮度を効率的に保つ目的があるのではないか?」と識者たちから指摘されています。
日本人は中国臓器移植ツアーの常連だった
臓器移植ビジネスの闇が広がる中国に対しては、2016年になると、アメリカ合衆国下院にて非難決議も可決されています。
2016年6月13日、米下院で343号決議案が満場一致で可決。「中華人民共和国で、国家認定のもとで系統的に合意のない良心の囚人から臓器が摘出されているという信頼性のおける報告が継続的に出されていることに関して懸念を表明する」「(犠牲者には)かなりの数の法輪功修煉者、その他の信仰を持つ人々並びに少数民族グループが含まれている」と言及している。
人権無視の状況が続いている中国の臓器移植ビジネスですが、日本人もそれに加担している現実があります。
日本は、中国への臓器移植ツアーを禁止していない先進国の1つであるため、世界で5本の指に入るほど利用者の多い国だとか。
そんな日本の現状に対しては、海外の人権活動家からも懸念の声があがっている状況です。
デービッド・マタス氏は中国との経済関係の断絶を提唱するわけではなく、少なくとも日本が倫理に適わない中国の移植医療界の加担者にならないよう、中国で臓器移植を受ける者の登録を行い、イスラエル、スペイン、台湾、イタリアに続き、中国への臓器移植ツアーを法的に禁ずるよう呼びかけています。
— 久野晋作 (@kunoshin) March 24, 2017
臓器売買ビジネスの悲惨な実態…アメリカでは子供が誘拐され人身取引
かつてはパキスタンが臓器売買ビジネスの中心地だった
中国における臓器移植手術体制が国際的な非難の的になっている一方で、臓器売買の闇市場の存在する国は世界中に転がっている現実があります。
パキスタンも、かつては国際的な臓器売買ビジネスの中心地とされていたものの、法律により禁止され、近年は外国人が移植手術を受けることが難しくなった国の1つです。
しかしながら、医療技術水準の問題により死者の臓器を移植することが困難な現実に加え、宗教的な理由で臓器提供に協力する人間が少ないお国柄、パキスタン人向けの闇市場は現在も温存されているとの情報も存在します。
臓器売買の闇ビジネスがなくならない理由の1つには、現地の労働者たちの生活苦なども関係してきているようで、借金返済のために仕方なく自身の腎臓を売るといった例は後を絶えないとか。
アメリカでは年間80万人の子供が行方不明に
臓器売買ビジネスについては、当然ながら子供が被害者となるケースも少なくありません。
アメリカなどでも年間80万人の子供が誘拐により行方不明となっており、その一部は闇ブローカーに売りつけられて、臓器売買の犠牲者になったのではないかと噂されているようですね。
私が昔サンフランシスコ行ったときに、現地の日本人ガイドが親に向かって「お母さん、子供から絶対目を離さないでくださいね。誘拐して臓器売買されて殺されるケースも多いですから。」って言ってたときはさすがに震えた。
— 🍣mackee04🍣 (@magic_mackee) January 13, 2014
その一方で、途上国などでは、金品を得るために親が子供を闇ブローカーに売り渡す例も珍しくないそうで、何とも救いのない話がゴロゴロと転がっていることになります。
臓器売買の相場は?闇市場で取引される臓器の値段
人間にとってお金を稼ぐ最終手段とも言える臓器売買ですが、その値段は国によってまちまちとなります。
前述のパキスタンなどでは、腎臓を売っても15万円ほどにしかならず、現地の水準でも1年分の生活費が捻出出来る程度だとか。
その辺の事情は、摘発・逮捕されるリスクを背負っているブローカーや医者側が、より多くの利潤を獲得したいといった都合も関係して来ているのかもしれませんね。
そのため、臓器売買が禁止されている一般的な先進国においても、臓器の取引額は想像よりも安いといった現実があるようですね。
ちなみに、海外の関連記事を参考にした先進国における各種臓器の取引額などは、下記のようになっています。
・腎臓:262000ドル
・肝臓:157000ドル
・心臓:119000ドル
・小腸:2519ドル
・角膜(両目分):1525ドル
・胆嚢:1219ドル
・頭蓋骨と歯:1200ドル
・脾臓:508ドル
・胃:508ドル
・肩:500ドル
・手と手首:385ドル
・血液:337ドル(1パイント当たり)
・肺:10ドル(1平方インチ当たり)
日本の臓器売買ビジネスの現状…法律で禁止されているも闇市場は存在?
2009年に臓器の移植に関する法律が施行
日本における臓器売買については、法律により明確に禁止されており、違反者には厳罰が待っています。
日本においては2009年の改正臓器移植法(正式名称は「臓器の移植に関する法律」)により、臓器売買は禁止されています。すなわち、「臓器売買の禁止、罰則:臓器提供の対価として財産上の利益を与えたり要求してはならない。違反者は5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処する。その他、書面作成などにも罰則が適用される。」とされています。
とはいえ、腎臓移植を希望する潜在的顧客だけでも数万人いると言われている日本だけに、正規ルートだけでは需要を賄えない状況となっており、前述の中国への臓器移植ツアーへ繋がっている現実があります。
日本にも臓器売買闇市場は存在していた?
日本において法律上は存在しないことになっている臓器売買市場ですが、実際のところは闇市場が存在しているとの噂が絶えない状況となっています。
日本における臓器売買の闇ブローカーは暴力団関係者が多いと言われており、被害者の大半は、ヤミ金などで借金を負った債務者やホームレスの方だとか。
暴力団関係者による臓器売買ビジネスは意外とシンプルな仕組みになっているらしく、被害者を中国へ連れて行き現地の病院で摘出手術を受けさせた後、闇市場に臓器を流しているようですね。
日本の臓器売買市場で最も需要のある臓器は腎臓となっているようですが、足元を見て買い叩かれている側面もあるのか、被害者側が受け取るお金は200~300万円程度にしかならないと言われております。
その他、ホームレスの方などを対象にした非合法売血ビジネスなども存在するらしく、額は少ないながらもちょっとしたお小遣い稼ぎになっているとか。
「時折、大阪市西成区の三角公園や、飛田新地近辺で売血業者がいるとの情報は耳にしています。400CCで5000円が相場だとか。特にホームレスは常備薬を服用していない者が多いので血液提供には適していると言われているそうです。もし生活保護受給者で売血業を行っている者が発覚すれば、きちんと“収入”としてカウントします」(前出・大阪市課長代理)
日本の臓器売買事件実例① 宇和島臓器売買事件
日本における臓器売買事件に関しては、2006年10月に摘発された「宇和島臓器売買事件」が挙げられます。
「宇和島臓器売買事件」で逮捕されたのは、愛媛県宇和島市内在住の水産会社役員・山下鈴夫と水産会社社長・松下和子となっており、2人は内縁の夫婦状態でした。
山下鈴夫が慢性腎不全を患ったことから始まっており、2005年6月頃になると、移植手術を受けないと命が危ないといった状況まで追い込まれていました。
そのため、腎移植可能な身内を探し回った山下鈴夫でしたが、息子や妹などからは提供を断られてしまい、途方に暮れていたそうですね。
そんな山下鈴夫の窮状を見かねた松下和子は、200万円の借金をしていた知人女性・Aさんに、「借金を全額返済したうえ、300万円の礼金を支払う」ことを条件に、ドナーになることを頼み込んだとか。
その後、Aさんに松下和子の妹と身分を偽らせて手続きを進めたため、2015年9月末に宇和島徳洲会病院にて腎移植手術は実施され、山下鈴夫は一命を取り留めることが出来ました。
しかしながら、松下和子が前言を翻して、150万円相当の車と30万円の現金しか支払わなかったため、それを不満に思ったAさんが警察に告発し、事件が発覚することになりました。
「宇和島臓器売買事件」では、逮捕された山下鈴夫と松下和子が「懲役1年執行猶予3年」の有罪判決を受けた他、Aさん本人も臓器移植法違反で書類送検されることとなり、「罰金100万円・追徴金30万円・車没収」の処分を受けています。
日本の臓器売買事件実例② 生体腎移植臓器売買仲介事件
日本における臓器売買事件には、2011年6月に摘発された「生体腎移植臓器売買仲介事件」も存在します。
こちらの事件は、慢性腎不全を患っていた東京江戸川区の開業医・堀内利信とその妻・堀内則子が、暴力団関係者を介して腎臓を購入した一件となります。
当初は、住吉会系組員・滝野和久を仲介役として坂上文彦と養子縁組し、腎移植を予定していた堀内利信でしたが、追加報酬を巡る交渉が決裂し破談してしまいました。
そのため、最終的には住吉会系組長・坂巻松男を仲介役にドナーを探し直し、石川竜哉と養子縁組をすることで、腎移植まで漕ぎつけることになりました。
その後、2010年7月に行われた宇和島徳洲会病院での腎移植手術は無事成功したものの、前述の通り「生体腎移植臓器売買仲介事件」が明るみに出ることとなり、堀内利信ら10人が逮捕されるといった大騒動へと発展しています。
暴力団関係者が絡む臓器売買事件ということもあり、「生体腎移植臓器売買仲介事件」の判決は「宇和島臓器売買事件」より重くなっており、堀内利信ら5人が実刑判決を受けたようです。
・堀内利信(懲役3年)
・堀内則子(懲役2年6ケ月)
・滝野和久(懲役3年、追徴金966万円)
・坂巻松男(懲役2年6ケ月、追徴金180万円)
・坂上文彦(懲役1年8ケ月、追徴金34万円)
実際に腎臓を提供した石川竜哉ではなく、交渉決裂に終わった坂上文彦が実刑判決を受けた原因については、無職で借金持ちだった石川竜哉とは違い、坂上文彦が元暴力団関係者だったことも関係しているようです。
臓器売買ビジネスについてまとめると…
・アメリカでは約80万人の子供が臓器売買のために誘拐されている
・闇市場で取引される臓器の値段は、先進国においても想像よりも安い金額で取引されていた
・日本では2009年に臓器の移植に関する法律が施行されたが、臓器売買の闇市場は存在するといわれている
臓器売買ビジネスと言うと、遠い外国の話として受け止めがちな日本人が多いですが、日本でも臓器売買事件は起こり、臓器移植ツアーに参加する日本人が絶えない状況という現実があるようです。