2017年の那須雪崩事故は死者8名を出した痛ましい事故で、事故原因や真相が話題です。
今回は「那須雪崩事故」が起きた場所、事故の経緯や被害者の死因など詳細、事故原因や真相、猪瀬修一教諭らの起訴や裁判、判決などその後や現在も紹介します。
この記事の目次
- 那須雪崩事故は「平成28年度春山安全登山講習会」中に起こった事故
- 那須雪崩事故の詳細① 前日から那須町では雪崩注意報が出ていた
- 那須雪崩事故の詳細② 2017年3月27日午前8時43分に事故発生
- 那須雪崩事故の詳細③ 救助連絡が大きく遅れた原因とは?
- 那須雪崩事故の詳細④ 被害者の死因は圧死
- 那須雪崩事故の原因① 「平成28年度春山安全登山講習会」主催者の不手際
- 那須雪崩事故の原因② 登山初心者が部活の顧問だった
- 那須雪崩事故の真相
- 那須雪崩事故のその後:猪瀬修一教諭らが起訴される
- 那須雪崩事故の現在① 民事訴訟で県などに約3億円の賠償命令
- 那須雪崩事故の現在② 猪瀬修一教諭ら3人に禁錮2年の実刑判決
- 那須雪崩事故のまとめ
那須雪崩事故は「平成28年度春山安全登山講習会」中に起こった事故
「那須雪崩事故」は、2017年3月27日に栃木県那須郡那須町で起こった事故です。
事故現場となったのは、町営施設であった那須温泉ファミリースキー場でした。
出典:https://nasu0327.com/wp-content/uploads/2018/04/39565931765b533a2ee4b7e66b5b0f32-849×1024.png
事故当日の那須温泉ファミリースキー場では、「平成28年度春山安全登山講習会」が開催されており、栃木県下の7つの学校から51名の生徒たちが参加していました。
・県立大田原高校
・県立真岡高校
・県立那須清峰高校
・県立矢板東高校
・県立宇都宮高校
・矢板中央高校
・県立真岡女子高校
春山安全登山講習会、実は過去の悲劇から始まった講習会だった
那須雪崩事故が起きてしまった「平成28年度春山安全登山講習会」ですが、1950年に栃木県下で起こった雪崩事故をきっかけに始まったイベントでした。
1950年12月30日、谷川岳を登山中の栃木県立佐野高等学校山岳部員11名が雪崩に巻き込まれ、生徒教員計5名が死亡した事故を踏まえ、登山知識と登山技術を向上させ、事故防止を目的に1958年5月に栃木県高体連と山岳連盟の共催で「第1回有雪期安全登山講習会」が始まりで、当初は不定期だったが、1964年より毎年3月に那須岳で開催されるようになった。1965年度から栃木県高等学校体育連盟が独自に実施するようになり、その頃から名称が「春山安全登山講習会」となった
引用:那須雪崩事故
本来は生徒たちの安全を守るためのイベントが、真逆の結末を生んでしまったことになります。
過去の「春山安全登山講習会」でも事故が起こっていた
栃木の春休み中の伝統イベントだった「春山安全登山講習会」ですが、実は過去にも事故が起こっていました。
2010年3月27日、講習中の生徒や引率の教員たちが雪崩に巻き込まれ、50~60m流されたのです。
奇跡的に死者や怪我人が出なかったため、救助後はそのまま講習が再開され、県高体連や県教育委員会にこの時の事故は報告されていませんでした。
那須雪崩事故の詳細① 前日から那須町では雪崩注意報が出ていた
那須雪崩事故が起きることになる「平成28年度春山安全登山講習会」は、本来は以下のスケジュールで行われる予定でした。
・初日→開会式、学科講習、幕営講習と設営
・2日目→班別の雪上訓練
・3日目→学校別の登山(茶臼岳)
そのため、27日は登山の予定を中止し、スキー場周辺でのラッセル訓練に変更されています。
ラッセル訓練では、5つの班がそれぞれ別行動を取っていました。
・1班:大田原高校山岳部(12名)と引率教師1名、講師1名
・2班:真岡高校山岳部(8名)と宇都宮高校生徒(5名)、講師1名
・3班:矢板東高校生徒(6名)と那須清峰高校生徒(5名)、引率教師2名、講師1名
・4班:矢板中央高校生徒(5名)と栃木県立宇都宮高校生徒(8名)、引率教師1名、講師1名
・5班:真岡女子高校生徒(4名)と栃木県立矢板東高校生徒(2名)、講師1名
那須雪崩事故の詳細② 2017年3月27日午前8時43分に事故発生
那須雪崩事故は、2017年3月27日午前8時43分に発生しました。
事故発生当時、樹林帯の支尾根を登っていた第1班から4班までが雪崩に巻き込まれています。
巻き込まれずに済んだのは、ゲレンデで歩行訓練をしていた第5班だけでした。第5班だけ支尾根を登らなかったのは、女子生徒で構成されたチームだったからのようです。
ちなみに、真っ先に雪崩に巻き込まれた第1班の中で生き残った講師は、事故発生当時の状況を以下のように証言しています。
1班 – 樹林帯の上の斜面を登り、隊列前方に見えた岩まで行って引き返す予定だったが、岩に向かって歩き始めて間もなく雪崩が発生した。講師は急斜面手前で止まるよう指示したが、前方の岩まで行きたいという要望があがり、これを講師が認め、同班のみ行動範囲が各教員に説明された場所より広がった。講師は、ふだん接している生徒でなく、名前もわからないため、止められずに進んでしまったと検証委員会に述べた。
引用:那須雪崩事故
那須雪崩事故の詳細③ 救助連絡が大きく遅れた原因とは?
那須雪崩事故が発生したのは午前8時43分でしたが、消防に通報が入ったのは事故発生から40分ほど後でした。
緊急事態にも関わらず、消防への通報が遅れた背景には、事故を想定した連絡体制が整っていなかったことが最大の要因と言われています。
雪崩に巻き込まれた2班講師が無線で本部の委員長を呼び出したが、委員長からの応答はなかった。委員長は無線機を携行せず、宿泊費の精算などをしていた。無線のやり取りを聞いた5班講師が、ゲレンデからスキー場のセンターハウスへ下山しつつ無線で2班講師に指示を仰ぐと、「本部へ行き、雪崩発生の報告と救助要請するよう伝える」と指示を受け、本部まで10分ほど歩いて移動し、駐車場にいた委員長へ雪崩発生を報告。委員長は午前9時20分頃に消防と警察へ通報した。なお本部への連絡に携帯電話も使おうと試みられたが寒さのため起動しなかった
引用:那須雪崩事故
そのため、事故現場に救助隊が到着したのは、雪崩発生から1時間40分も経った後でした。
那須雪崩事故の詳細④ 被害者の死因は圧死
那須雪崩事故発生から救助隊が到着するまでに1時間40分もかかったこともあり、死者8名、重傷者2名(入院2名)、中軽症者38名(入院1名)の大惨事となりました。
県警によると、死因はいずれも圧死だったようで、雪の重みで呼吸が阻害されて死に至ったと見られています。
特に被害が大きかったのが第1班で、大田原高校山岳部のメンバー7名と引率教師1名が命を落としています。
そのため、一生ものの心の傷を背負ってしまった大田原高校山岳部のメンバーたちですが、故人の遺志を受け継いで登山を続け、キリマンジャロ登頂に挑戦した人物もいるようです。
那須雪崩事故から生還した元大田原高校山岳部の三輪浦淳和さん、今は亡き先輩との約束を果たすため、キリマンジャロ挑戦にゴンさんがエール!#三輪浦淳和 #ゴン中山 #中山雅史pic.twitter.com/if0UJfmcI4
— ゴン好き (@jubigon9) October 28, 2019
那須雪崩事故の原因① 「平成28年度春山安全登山講習会」主催者の不手際
那須雪崩事故後、県教育委員会の主導で、専門家たちを集めた検証委員会が立ち上がっています。
その検証委員会では、「平成28年度春山安全登山講習会」の主催者側の不手際として、以下の問題点が指摘されました。
・ラッセル訓練を実施する際に行動しても良い範囲を決めていなかったこと。
・行動範囲が決められていなかったことで、第1班が雪崩の危険性の高い斜面にまで侵入してしまったこと。
・2010年の事故の報告を怠ったために非常時の連絡体制が整備されていなかったこと。
そのため、検証委員会は「主催者側の危機管理意識の欠如が事故の原因」と結論づけています。
那須雪崩事故の原因② 登山初心者が部活の顧問だった
那須雪崩事故で、教員として唯一の犠牲になった毛塚優甫さん(死亡時29歳)は、大田原高校に赴任した2016年春から登山を始めたことが分かっています。
そんな登山初心者の毛塚さんでしたが、部活の顧問のなり手が他におらず、周囲から押し付けられる形で山岳部顧問に就任したようです。
そのため、事故当時の登山歴も1年未満であり、両親にも「向いていない」 と愚痴をこぼしていたとの話もあります。
那須雪崩事故の真相
雪崩の発生原因は人災だった可能性も
2019年9月、山形県山形市内で開催された雪氷研究大会にて、那須雪崩事故は「雪崩の発生自体が人災だった」との説が発表されて話題になりました。
これは防災科学技術研究所の調査チームが発表した説であり、「登山研修中の班が斜面に入り込むことで表層雪崩が生じたと考えるのが自然」との結論を出しています。
そのため、ネット上でも主催者側の判断ミスを批判する声が多くなっている状況です。
13名無しさん@1周年2020/02/07(金) 07:22:35.11ID:RI4ZfZ/g0
こういうさ部活動みたいなのに命かけさせる顧問てほんとに困るよね。
テキトウにやってくれる顧問だったら「きょうはヤバそうなんでパスな」とか言ってくれて死なずに済んだのにな。
14名無しさん@1周年2020/02/07(金) 07:26:07.69ID:zS1YrdMU0
これこそ責任重大
大川小の津波なんかよりも
那須雪崩事故のその後:猪瀬修一教諭らが起訴される
那須雪崩事故では、主催者側に県教育委員会から懲戒処分が下っています。
処分を受けたのは、「平成28年度春山安全登山講習会」の委員長を務めた猪瀬修一教諭、第1班の講師であった菅又久雄教諭、第2班の講師であった渡辺浩典教諭でした。
処分内容はそれぞれ、猪瀬修一教諭と菅又久雄教諭が停職5ヶ月、渡辺浩典教諭が停職3ヶ月です。
その後の2019年3月には、3人は栃木県警により業務上過失致死傷罪で書類送検され、2022年2月になると宇都宮地方検察庁より在宅起訴されることになりました。
「那須雪崩事故で引率教諭3人を在宅起訴 業務上過失致死傷罪で」というニュース速報。どんなに気をつけても遭難する時にはする。しかし、果たしてこのケースは本当に防げなかった遭難なのだろうか。本当に初歩的なミスはなかったのか。遭難を繰り返さない為にも検証は必要。 https://t.co/VuhajkmLqU
— 野口健 (@kennoguchi0821) February 10, 2022
那須雪崩事故の現在① 民事訴訟で県などに約3億円の賠償命令
主催者側の不手際が目立った「平成28年度春山安全登山講習会」に対し、被害者側の不信感が爆発し、遺族・被害者の会が立ち上がっています。
そして2020年3月、遺族側が県高体連などを相手取り、真摯な謝罪と損害賠償を求めて民事調停を申し立てました。
ただ、話し合いは平行線をたどり、2022年1月に不成立に終わっています。
民事調停が不成立に終わったとのニュースに対し、ネット上でも批判の声が多数寄せられました。
58サビイロネコ(東京都) [US]2022/01/25(火) 08:47:21.70ID:doYeBmVP0
教師って基本生徒を殺す権利を持ってるよね
大体罪に問われないし
67クロアシネコ(茸) [JP]2022/01/25(火) 08:55:03.39ID:nq+BvEbf0
これに関しては引率が庇われる意味がわからん
まったく行かなくていい状況だった
しかも決めた奴は宿泊施設でぬくぬくしてるし
その後、遺族側は2022年2月に、栃木県や県高体連に約3億8000万円の損害賠償を求める民事裁判を起こしています。
そして2023年6月、宇都宮地方裁判所は、責任者だった教諭ら3人が事故当日の朝にテレビなどで気象情報や注意報を確認しなかったと指摘、「雪崩に対する危機意識の希薄さ」が事故発生の一因だとして、県と県高体連に対し、合わせて2億9000万円余りの賠償を命じました。
これまでの裁判で、県は組織としての賠償責任があることについては争わない姿勢を示し、教諭ら3人は国家賠償法の規定から公務員の職務で発生した損害の賠償責任は自治体が負うとして、訴えを却下するよう求めていました。28日の判決で、宇都宮地方裁判所の浅岡千香子裁判長は県と、県の高校体育連盟に対しあわせて2億9000万円余りの賠償を命じました。一方、教諭ら3人に対する訴えについては「公務員の職務行為のなかで発生した事故であるため賠償責任を負わない」として棄却しました。
県側も原告の遺族も控訴はせず、この判決は確定しています。
那須雪崩事故の現在② 猪瀬修一教諭ら3人に禁錮2年の実刑判決
業務上過失致死傷罪に問われた猪瀬修一教諭と菅又久雄教諭、渡辺浩典教諭は裁判において、「雪崩の発生は予見できなかった」として起訴事実を否認し、無罪を主張していました。
しかし、2024年5月の判決公判で、裁判長は猪瀬修一教諭ら3被告の過失や雪崩発生の予見可能性を認定し、「未然に防止すべき業務上の注意義務を怠った」と指摘。3被告に禁錮2年の実刑判決を言い渡しました。
3被告は積雪期の登山や指導経験などから、「雪崩の発生を容易に予見できた」と認定。那須岳登山から深雪歩行訓練へと漫然と計画を変更し、安全を確保するための明確な訓練範囲を定めず、周知もしなかったとして「危険回避の措置を講じず、義務に違反した」と判示した。 瀧岡裁判長は量刑理由で「部活動の死傷事故としては類をみない大惨事」「相当に緊張感を欠いたずさんな状況で漫然と実施された」などと言及し、実刑は免れないとした。
地方公務員法で、教員は執行猶予を含む禁錮以上の刑に処せられると失職することとなります。
猪瀬修一教諭ら3人は禁錮2年とした1審判決を不服として東京高裁に控訴していますが、控訴に対しては被害者遺族からも疑問の声が上がっていました。
3被告の控訴を受け、山岳部の第3顧問だった教諭の毛塚優甫さん(当時29歳)の父辰幸さん(72)は「8人の死の責任と向き合い、判決を受け入れてほしかった。やりきれない思いだ。自分たちの罪と向き合った上での心からの謝罪を望んでいたが、それが遠のき残念だ」としたうえで「判決の中で明確に責任の所在が示されたのに、どうしてまだ争うんだ」と控訴に疑問の声を漏らした。佐藤宏祐さん(当時16歳)を亡くした父の政充さん(55)は「控訴理由が分からないので、なんとも言えない複雑な気持ち。控訴は(被告の)当然の権利だと理解はしているが、遺族としては1審の判決を素直に受け止めてほしかった」と言葉を選びながら話した。
那須雪崩事故のまとめ
主催者側のミスが招いた人災とも言える雪崩災害で、死者8名を出す大惨事に発展してしまった那須雪崩事故についてまとめました。
責任者であった猪瀬修一教諭ら3人は無罪を主張していますが、1審では禁錮2年の実刑判決が言い渡されています。
那須雪崩事故の犠牲者の方々のご冥福を祈りつつ、この記事のまとめを終了させて頂きます。