日本をはじめ世界中で人気の「ポケットモンスター」ですが、ポケモンショックという放送事故も過去に起きました。
今回はポケモンショックの原因や症状、死者数や後遺症、ピカチュウの映像、かわいそうなポリゴンなどその後をまとめます。
この記事の目次
ポケモンショックとは
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ポケモンショックとは、1997年12月16日、アニメ「ポケットモンスター」(ポケモン)が原因で、視聴者が光過敏症発作を起こし、全国で651人が救急搬送された放送事故のことです。
「ポケモンショック」のほかにも、次のように呼ばれることがあります。
・ポケモンパニック
・ポケモン騒動
・ポケモンフラッシュ
・ポリゴンショック
・ポリゴン事件
・ポリゴンパニック
・ポリゴン騒動
・ポリゴンフラッシュ
ポケモンショックの詳細を見ていきましょう。
第38話「でんのうせんしポリゴン」
当時のアニメのポケモンは、テレビ東京系列で18時30分~19時00分の30分枠で放送されていました。1997年12月16日は第38話で、タイトルは「でんのうせんしポリゴン」です。
主人公のサトシたちがコンピュータ内で起きている事件を解決するために、コンピュータ内部に入り込むという内容で、この38話に出てきたポケモンは「ポリゴン」と言います。
アニメのポケモンは子供たちに大人気で、この38話の視聴率は関東で16.5%、関西で10.4%で、このポケモンショックがあった時は全国で345万人が視聴していたと推計されています。
視聴者130名が入院!
12月16日の「でんのうせんしポリゴン」の放送終了直後から、放送を見ていた一部の視聴者が体調不良を訴えて、病院に搬送されたという事態になりました。
病院に搬送された視聴者のほとんどは子供(児童)であり、消防庁の発表になると、全国30都道府県で合計651名が救急搬送されて、208名が入院したと報道されています。
病院に救急搬送されたのは651名ですが、体調不良になった視聴者はもっとたくさんいると推測されています。
18日の読売新聞朝刊では「各地の教育委員会の調査では、小学生を中心に病院には行かないまでも、1万人以上が吐き気などの症状を訴えていたことが分かった」と報道されている。
病院に行かなかった体調不良者を含めると、このポケモンショックで体調不良になったのは1万人以上にもなると言われています。
この12月16日のポケモンの視聴者は345万人とのことですから、約300人に1人の割合で、ポケモンを見たことで体調不良になったということになります。
子どもたちに大人気のアニメ「ポケモン」を見た視聴者が、体調不良を訴え、病院に搬送された人もいたというのは、世間に大きな衝撃を与えました。
NHKで第一報が報じられた
このポケモンショックを最初にニュースで報じたのはNHKです。12月16日の21時59分からの1分間のニュースで、ポケモンの視聴者が体調不良を訴えていることを報じました。
ポケモンショックが起こってから約3時間後には、「ポケモンが原因で体調不良者が続出した!」ということが報じられたのです。速いですね。
その後、フジテレビも同日深夜の「ニュースJAPAN」でポケモンショックを報じました。
さらに、翌日には新聞・スポーツ新聞各社が朝刊一面でポケモンショックを扱い、テレビもNHK・民放各社ともニュースやワイドショーで大きく報じています。
ポケモンショックの原因はピカチュウの「10まんボルト」
ポケモンショックの原因は、発生当初は不明でした。つまり、なぜポケモンを見て視聴者が体調不良になったのかは分からなかったんです。
しかし、体調不良者の証言などを事情聴取する中で、ピカチュウの「10まんボルト」がワクチンソフトのミサイルに当たった場面で、みんなが体調不良を訴えたことが明らかになりました。
ピカチュウの「10まんボルト」とはピカチュウの技で、「強い電撃を浴びせて攻撃。敵を麻痺させる」効果があります。
この「10まんボルト」は18時51分34秒からのシーンで、約4秒間にわたって、赤と青の激しい光が超高速で点滅しました。
また、それ以外のシーンでも、この38話の「でんのうせんしポリゴン」ではストロボやフラッシングなどの激しい点滅が多用されていました。
調べた結果、30分間の放送で1秒間に12回点滅したシーンが25ヶ所もあることが分かりました。
これにより、このピカチュウの「10まんボルト」のシーンをはじめとした光の激しい点滅が原因で、視聴者は光過敏症発作を起こして、体調不良になったと結論付けられました。
光過敏症発作とは?
光過敏症発作とは、光刺激による異常反応の症状を言います。視覚から強い光の刺激が入ると、脳が過剰に興奮して、様々な症状を引き起こすとされているんです。
映像技術・映像コンテンツの発達によって、人工的な強い光を目にする機会が増えました。ポケモンなどのアニメや映画、テレビゲーム、テレビ番組などですね。
強い光に対する耐性は個人差が大きく、同じ光を見ても、光過敏症発作を起こす人もいれば、「眩しいな」くらいしか感じない人もいます。
耐性が低い人ほど、光過敏症発作を起こしやすく、発作を起こした時に重症になりやすいとされています。
ポケモンショックの被害者の症状とは
ポケモンショックで体調不良になった人は、どのような症状だったのでしょうか?症状は人それぞれですが、主な症状を挙げていきます。
・けいれん
・目のかすみ
・目がちかちかする
・気持ち悪い
・気分が悪い
・クラクラする
・頭痛
・吐き気
子供向けのアニメを見ていて、子供たちが急にてんかん発作を起こしたり、全身けいれんを起こしたりしたら、保護者としては驚いてしまいますね。
救急搬送されたのが全国で651人もいたというのは、いかにポケモンショックでの光刺激(光の点滅)が強かったかが分かると思います。
おそらく、救急搬送されたのはてんかん発作やけいれんを起こしたり、意識を消失した子供たちだけのはずです。頭痛や目がかすむくらいの症状で、救急車を呼ぶことはないでしょう。
そう考えると、ポケモンショックで何かしらの症状を感じたのは1万人以上いたというのは納得できますし、ごく軽い症状の人も合わせたら、もっと被害者はいたかもしれませんね。
ポケモンショックでの死者数とは
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ポケモンショックでは、幸いなことに死者は出ていません。
しかし、大阪在住の5歳の女の子は呼吸困難になり、約3時間にわたって意識不明の重体になりました。また、名古屋では吐血をした小学生もいたんです。
これらの重症の子供たちを見ると、ポケモンショックで死者が出なかったのはあくまでも幸運であり、一歩間違えば、死者が出てもおかしくない状況だったと言えるでしょう。
ポケモンショックの後遺症に苦しむ人も…
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ポケモンショックで病院に救急搬送された人は、入院した人でも、みんな回復して退院しています。
しかし、ポケモンショックの時の記憶が脳裏にこびりついたことで、「テレビを見るのが怖い」というPTSDのような後遺症に悩む人もいました。
好きだったテレビが怖くなってしまったというのは、重大な後遺症ですよね。
また、ポケモンショックが原因で、てんかんが判明した子供たちもいます。
実際は光刺激で誘発されるてんかんは非常に稀です。(全般型てんかんか後頭葉に焦点があるてんかんかどちらか)ポケモン人気にあやかってたくさんの子どもたちがテレビに釘付けになったおかげで、今まで診断されていなかったてんかんの児童を洗い出した形となりました。
ポケモンショックによっててんかんが判明した、これもある意味後遺症ですね。
てんかんが判明したことで、治療を始められたというメリットはありますが、本人や家族にとって、てんかんの診断を受けるのはショックなことでしょうから。
ポケモンショックのピカチュウ「10まんボルト」映像 【閲覧注意】
ポケモンショックの詳細や原因、症状を見て、実際にポケモンショックが起きたピカチュウの「10まんボルト」のシーンを見てみたいと思った人もいるでしょう。
ポケモンアニメでは、このポケモンショックの回は封印されていますので、もう二度とポケモンの「第38話」を見ることはできません。
しかしYouTubeには、問題の激しい点滅が起こるピカチュウの「10まんボルト」のシーンが残っていましたので紹介します。
動画を見る前に、必ず部屋を明るくして、画面から距離を取って見てください。
そうしないと、あなたも光過敏症発作を起こす可能性があります。もし、少しでも気分が悪いと思ったら、見るのを止めてくださいね。
では、くれぐれも注意して動画を見てください。決して無理はしないでください。
動画を見た方はわかると思いますが、相当眩しいですよね。現代のテレビでは考えられないほど、激しく点滅しています。
このポケモンの「でんのうせんしポリゴン」を暗い部屋の中で見たら、てんかん発作など光過敏症発作を起こすの無理はないでしょう。
ポケモンショックは録画映像でも起きている
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ポケモンショックは放送当日に600人以上が、さらに放送から数日後にも100人くらいが救急搬送されたと言われています。この「数日後の100人」は録画したビデオを見た人たちです。
人気アニメですから、リアルタイムで見られず、録画していた人もたくさんいました。そして、録画した人の中には、ポケモンショックのニュース後、興味本位で見た人もいたんです。
しかも、録画したビデオでポケモンショックになった人は、子供だけでなく42歳の大人も含まれていたというのですから驚きですよね。
さらに、このポケモンショックから半年後、小学校教員が自分で録画していた問題の映像を子供たちに見せ、小2の女子児童1人が気分が悪いと訴えて、保健室に行く事態になっています。
ポケモンショックのその後
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ポケモンは一時放送休止
ポケモンショックが起こったことで、テレビ東京はポケモン関係の番組・コンテンツをすべて休止することを発表しました。
ポケモンショックが起こったことは事実であり、ポケモンのアニメのどこにどのような原因があって、どうすれば再発を防止できるのかが分からなかったための措置です。
「原因が究明されて再発防止策がとられるまで」という発表でしたから、どのくらいの期間、ポケモンの放送が休止されるのか不明でした。
このポケモンの放送休止は、毎週30分のレギュラー放送だけでなく、ポケットモンスター関連のコンテンツ全部が含まれました。
そのため、「おはスタ」でポケットモンスター関連の情報も扱わないようになったんです。
アニメのポケモンは放送休止になり、代わりに『学級王ヤマザキ』が放送されるようになりました。
ポケモンバッシングが始まる
ポケモンが一時放送休止になってから、世間からのポケモンバッシングが始まりました。
このポケモンショックの原因はチカチカと点滅させた演出であり、「ポケットモンスター」というコンテンツが悪いわけではありません。もちろん、ピカチュウもポリゴンも悪くありません。
でも、マスコミ各社はポケモンが悪いという風潮を作り出し、ポケモンへの一方的なバッシングをして、「ポケモン=悪」としたんです。
このことで、ゲームボーイライト、ゲームボーイカラーが発売延期となるなど、テレビ局以外にも大きな影響が出ました。
しかし、NHKが1997年3月に放送した「YAT安心!宇宙旅行」の第1期・第25話でも同じように体調不良を訴えた視聴者がいたことを発表したことで、ポケモンへの風向きが変わります。
また、記者会見などでストロボが連発されることでも、同様の症状が出ることが判明します。
これにより、ポケモンショックの原因が「ポケモンのせいではなく、光の演出の問題」であることが明らかになり、ポケモンバッシングは徐々に鎮静化していきました。
注意を促すテロップが出るようになった
1998年4月8日、NHKと民放連が光の点滅などに対するガイドラインを発表しました。また、テレビ東京は4月11日に「アニメポケットモンスター問題検証報告」という番組を放送しました。
そして、ポケモンショック後にポケモンのアニメは放送を休止していましたが、放送再開を望む声が多かったことから、テレビ東京は1998年4月16日から放送を再開しています。
また、このポケモンショックを機に、子供向けのアニメが放送される前は、「部屋を明るくして離れてみてね」のような注意を促すテロップが入れられるようになったんです。
ポケモンショックでポリゴンがかわいそうだと話題に
出典:ameblo.jp
このポケモンショックでは全国にたくさんの被害者が出ましたが、一番の被害を受けたのは「ポリゴン」かもしれません。
ポリゴンはポケモンショックが起こった第38話「でんのうせんしポリゴン」に登場したキャラクターです。
しかし、この38話はポケモンショックを受けて封印されることになりました。VHSやDVD、再放送からも除外され、ポケモンの38話は欠番扱いとなっています。
そして、このポケモンショックに登場したというだけで、ポリゴンは悪者扱いされ、まるでポリゴンがポケモンショックを引き起こした元凶と勘違いされたまま、姿を消すことになりました。
でも、ポリゴンはアニメの中では何も悪いことをしていません。そのため、「ポリゴンは悪くない」という風潮が生まれてきました。
そんな中、長い間の沈黙を破り、英語版のポケモンのTwitterアカウントがポリゴンについてツイートしました。
⚠⚠⚠
— Pokémon (@Pokemon) September 18, 2020
404 Error
Porygon not found
「ポリゴンが見つからない」とツイートし、さらに次のようなツイートもしています。
これを見たポケモンファン&ポリゴンファンは「ようやくポリゴンが許された!」と歓喜。
ですが、なぜか2021年時点で、この「Porygon did nothing wrong」のツイートは削除されています。ポリゴンはやっぱり許されていなかったのでしょうか?
ポリゴンはポケモンショックの煽りを受けて、ポリゴンはアニメの中から消えてしまい、さらに汚名を着せられてしまった…、ポリゴンは何にも悪くないのに…。
ポケモンショックの一番の被害者は、もしかしたら、ポリゴンなのかもしれません。
ポケモンショックのまとめ
ポケモンショックの詳細や原因(光過敏症発作)、症状や後遺症、死者について、ポケモンショックの映像やその後の対応、ポリゴンは許されたのかどうかなどをまとめました。
ポケモンショックを機に、アニメなどでは過剰な光の演出は少なくなったように思います。
テレビ局など制作側が配慮するのはもちろんですが、私たち視聴者も部屋を明るくして離れてみるなど気を付けなければいけませんね。
もう二度と光過敏症発作の被害者とポリゴンのような犠牲を出さないために。