2021年7月3日に熱海市で発生した土砂崩れ、土石流災害が注目されています。
この記事では熱海の土砂崩れ、土石流災害の概要、場所がわかる地図や画像、土石流発生時の映像、不適切な方法で造成された盛り土が原因の人災との見方やメガソーラー関連説などについてまとめました。
この記事の目次
熱海の土砂崩れ災害(土石流)の概要
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2021年7月3日午前10時半頃に、静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区で大規模な土石流・土砂崩れ災害(土石流)が発生しました。
土砂災害が発生した静岡県熱海市では、この土石流発生の2日前の7月1日から雨が降り続いており、2日の朝には静岡県全域に大雨警報が発令され、2日の午後0時には熱海市への土砂災害警報も発令されていました。
ただし、土砂崩れ発生時点での行政からの避難情報としては「高齢者等避難」が出されたのみで、全体住人への「避難指示」は出されていませんでした。
土砂崩れの発生地はJR熱海駅から北へ約1.5km、伊豆山の標高約400メートルの地点でした。この場所は、伊豆山中を流れる逢初(あいぞめ)川の上流近くの土地で、別の場所から持ち込んだ土砂などを使って土地を平らに整備する「盛り土(もりど)」と呼ばれる工事が行われていた造成地だった事が判明しています。
専門家からは、この盛り土部分に大量の水が含まれた事が原因で土砂崩れが起こり、それが逢初川に流れ込むようになって土石流が発生した可能性が高いとの見解が示されています。
土砂崩れの発生地となったこの盛り土による造成地から海岸地点までは約11度の急勾配で、逢初川に流れ込んだ土石流は、時速40キロ弱もの速度で海岸線付近を走る国道135号線を突っ切るようにして、約2キロの距離をわずか3分ほどで流れ下ったという事でした。
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土石流が発生した熱海市伊豆山地区は、伊豆山から相模湾にかけての急勾配の険しい地形でしたが、人気観光地としてホテルや旅館などの施設が点在していて、土石流はこうした地域の住宅や施設などを押し流しながら流れ下りました。
土砂は路上に停車していたバスが埋まるほどの量で、電信柱を押し倒すほどの圧力がありました。
これによって、わかっているだけで131棟の建物が被害を受け、7月16日の時点で、死者が13人、安否不明者が16人、負傷者なども含めて甚大な人的被害が発生しています。
その他にも、この地域を通る大井川鉄道の線路にも土砂が流れ込むなど、大きな被害が生じています。
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また、伊豆山から相模湾までの間には東海道新幹線、JR東海道本線の線路も通っていましたが、土石流は新幹線東海道線の線路の高架の真下を通過したものの、関連する施設への被害は確認されていないとの発表が出ています。
土石流発生から2週間が経過した2021年7月16日の現在も、警察、消防隊、海上保安庁、自衛隊などから大規模な救助隊が派遣され、懸命な救助活動が続いていますが、大量の土砂が堆積している事や急斜面の地形が多い事などから重機を入れられない場所が多く、土砂撤去作業が難航していると報じられています。
ただ、16日に応急的なスロープが整備されたため、重機を使った本格的な土砂撤去作業が開始できる見込みとの発表も出ています。
7月16日の時点で、住宅が全壊したり深刻な被害を受けた住民500人以上が避難生活を余儀なくされていて、また熱海地区の観光産業にも深刻な影響が出ているという事で、一刻も早い事態の好転が望まれています。
熱海の土砂崩れ災害(土石流)の場所の地図や空中写真
文章だけでは状況がわかりづらいので、熱海の土砂崩れ災害(土石流)の詳しい発生場所の被害地域のわかりやすい地図や空中写真なども引用して紹介しておきます。
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上の地図画像は週刊新潮で紹介されていたものですが、土砂崩れが発生した盛り土の地点から、土石流が逢初川の流れに沿って、東海道新幹線とJR東海道本線、さらに国道135号線も突っ切って海岸線近くまで流れ落ちた流れがよくわかります。
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また、上の画像はWikipediaに掲載されていた資料で、空中からの写真を利用してわかりやすく土石流の被害が発生した場所が示されているので紹介します。
そして、下の画像は土石流の発生後の2021年7月6日に撮影された空中写真です。
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土石流が流れた場所が茶色い筋ではっきりと確認でき、土砂が海にまで流れ出しているのもわかります。
また、後述しますが、現在、土砂崩れに関連があるのではないかとの疑いが生じている、メガソーラー施設の位置関係もわかりやすく確認できます。(写真正面から見て、盛り土があった地点のすぐ左隣)
熱海の土砂崩れ災害(土石流)発生時の映像
熱海の土砂崩れ災害発生時の映像が現地にいた人によって撮影されTwitterなどインターネット上で公開されました。その映像がさらにテレビのニュース番組などでも繰り返し流され、世間に衝撃を与えています。
現在もネットで確認できる熱海の土石流発生時の映像をいくつか紹介しておきます。
下の映像は、ニュース番組などでも繰り返し流されたもので、停車していた自動車が完全に土砂に飲み込まれる様子や、電信柱が簡単に押し倒されて火花が飛んでいる様子などが確認できます。
さらに、下の映像もネットで公開され、ニュース番組などでも繰り返し流されていたものです。目の前の建物が倒壊しさらに撮影者の方に向かって土砂がゆっくりと流れてくるのが確認できます。
その光景を茫然と眺めている人の姿も確認できますが、この映像がネットに流れた直後には、撮影者を含め周囲の人々は早くそこから避難した方がいいというコメントも多くつけられていました。
また、下の映像は地域に住む女性が、土石流が発生する中で撮影していた映像です。
熱海市の土石流現場の近くに住む56歳の女性は、逢初川近くの道路で大量の泥水が流れる様子を動画で撮影し、その、およそ3時間後にも同じ場所で土石流が押し寄せる様子を撮影していました。https://t.co/Ar49HzgtUM#nhk_news #nhk_video pic.twitter.com/qqF1J9fRYC
— NHKニュース (@nhk_news) July 9, 2021
熱海の土砂崩れ災害(土石流)の原因① 盛り土をした業者による人災との見方が強まっている
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熱海の土砂崩れ災害(土石流)の原因は、伊豆山内の盛り土によって造成された土地が崩壊し、大量の土砂が近くの逢初川に流れ込んだ事だと見られていますが、この盛り土には、排水設備や土砂の流出を防ぐ堰堤が設置されておらず、不適切な方法で工事された疑いが浮上し、天災ではなく人災ではないかとの声が上がっています。
静岡県による調査報告によると、今回の土石流の土砂の総量は約5万55m立方メートルで、そのうちの大半が盛り土だったという事です。
複数の専門家から、7月1日から続いていた大雨によって、適切な排水設備が設置されていなかった盛り土の中に大量の水が溜まり、地盤が滑りやすくなって最初の土砂崩れの原因になったとの見解が示され、現在はこの説が有力視されています。
今回の大雨で盛り土に約2万立方メートルの雨水が流入したと分析。難波副知事は「排水が適切でなく、盛り土に水がたまりすぎた」と推定する。
盛り土をしたのは同土地の前所有者の小田原市の不動産業者
熱海市の土石流災害が、不適切な工法による盛り土が原因の人災だったとして、それではこの盛り土をしたのは一体誰かという事になります。
報道によれば、盛り土をしたのは現在の土地の所有者ではなく、その前の土地の所有者で、当時、神奈川県小田原市に事務所を構えていた不動産業者だという事ですが、現在はこの会社は倒産しており、責任者とも連絡が取れない状態だという事です。
盛り土をした不動産業者は法令違反を繰り返していた
静岡県によれば、この業者は2006年9月にこの一帯の土地を取得し、2007年3月に「建設残土の処分」を目的に、静岡県土採取等規制条例に基づいて盛り土工事を熱海市に申請して同4月に許可されています。
ところが、この業者は造成の段階で、無断で当初の施工計画より対象面積が拡大して木の伐採を始めた上、申告していた建設残土だけでなく産業廃棄物や廃自動車まで埋め始めたため、静岡県と熱海市は廃棄物の撤去と土砂搬入の中止を繰り返し要請しています。
しかし、この業者はこうした行政からの要請に従わなかったという事です。
その後、不動産会社側は法令違反を重ねた。07年4月には、盛り土の造成面積が森林法で規制される1ヘクタール超に拡大していたことが分かり、県は翌月、文書で指導した。この違反は是正されたものの、10年8月には盛り土の中に産業廃棄物の混入が確認され、県は再び指導を行った。同9月には熱海市が工事の中止を要請したが、会社側は当時、従わなかったという。
その後、この不動産業者は、行政からの要請を無視したままの状態で、2011年2月に現在の土地所有者に売却したようです。
盛り土をした不動産業者は現在の土地所有者との契約内容にも違反
この不動産業者と新たな土地所有者との間の契約には「盛り土の中にある産業廃棄物を片付ける」という内容が含まれていたとの事ですが、その契約は守られず、最終的に現在の所有者が熱海市の指示により、埋まっていた廃自動車などを撤去したようです。
静岡県熱海市伊豆山の大規模土石流の起点となった土地に不適切な盛り土をした神奈川県小田原市の不動産管理会社(清算)が、現在の所有者と交わした「盛り土の中にある産業廃棄物を片付ける」との趣旨の契約を守らず、土中に産廃を残したまま引き渡していたことが、複数の関係者への取材で分かった。現所有者側が熱海市の指示で、埋まっていた自動車などを撤去した。
土石流発生後の調査で盛り土の高さが法令基準を大幅に上回っていた事も判明
熱海市の土石流災害の原因とされる盛り土を行なった不動産業者は、法令違反や契約違反を繰り返すなど、まともな業者ではなかった事が窺えますが、土石流発生後の静岡県による調査で、この業者の更なる法令違反が発覚しています。
静岡県の調査報告によると、この不動産業者は、2009年に盛り土の高さを15メートル、量を約3万6600立方メートルに変更する届け出を熱海市に出していたようです。
県の調査によると、盛り土部分の土地を当時所有していた業者は2009年、県土採取規制条例に基づいて、盛り土を高さ15メートル、約3万6600立方メートルに変更する届け出を熱海市に出していた。
しかし、土石流発生後に2020年の地形データをもとに、盛り土の高さや量を計測したところ、この業者が届け出た内容を大幅に上回っており、高さは約50メートル、量は5万4000立方メートルだった事が発覚しました。
20年の地形データで、盛り土の高さは届け出の3倍を超える約50メートル、量も約1・5倍の約5万4000立方メートルまで増えていた。県の技術基準では、盛り土の高さは原則15メートル以内になっている。
盛り土の高さは法令基準で「15メートル」とされているため、この不動産業者は、行政への申し出もせずに、その基準の3倍を超える高さで盛り土を造成していた事になります。
熱海の土石流は天災ではなく人災という声が強まっている
こうした情報が次々と報じられているため、今回の熱海市での土石流災害は、天災ではなく、この不動産業者が原因となった人災であるという声が強まっている状況です。
熱海の土石流が人災で、犠牲者の方は盛り土をした不動産業者に殺害されたに同じってことがほぼ確実じゃないか?
— たつやん (@ta28_0319) July 15, 2021
ひええ…熱海の土石流の災害、天災やなくて人災やないか…
— ナルー@アシュテ2鯖 (@mascarpone_love) July 11, 2021
これは酷すぎる!
熱海の土石流、完全に人災
— アグレス (@AmKVo5JWGqxU7y1) July 10, 2021
これから業者さんあぶり出されて来るんだろうね#熱海の土石流
熱海の土砂崩れ災害(土石流)の原因② 近くのメガソーラー施設の関連を疑う声も
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現在、熱海の土石流災害の原因は不適切な工法による盛り土が、雨によって土砂崩れを起こしたという説が有力になっていますが、この盛り土があった地点から南西20~30メートルほどのところにあるメガソーラー施設が大元の原因ではないかとする説も一部ネット上で囁かれています。
その説では、このメガソーラー施設を建設したため、この地点の保水力が低下し、ここから水が盛り土側へと流れ込み、それが盛り土が土砂崩れを起こす原因になったのではないかという見解が示されています。
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このメガソーラー原因説については、一部の専門家からも関連を指摘する声が出ていて、行政も関連性を検証していく考えを示しています。
このメガソーラー施設を建設したのは、現在のこの土地一帯の所有者ですが、その代理人弁護士はメガソーラー施設のある土地から流れる水は、盛り土のあった土地とは反対側の谷へと流れるように傾斜をつけて工事されており、今回の土石流発生とは関係がないと説明しています。
ソーラーパネル造成地が土石流の発生に影響したとの指摘もあるが、所有者の代理人の河合弘之弁護士はこう反論する。 「ソーラーパネルのある土地から流れる水は、崩壊した谷とは反対側に流れるようになっている。ソーラーパネルが原因になったというのは、根も葉もないデマだとはっきり言っておきたい」
この業者側の言い分は正しい事が確認されているようですが、静岡県の地質構造・水資源専門部会委員も務める地質学者の塩坂邦雄さんは、メガソーラー造成地と、土石流発生には直接的な関係はないとした上で、このメガソーラー施設の工事用の取り付け道路が雨どいの役割をして、結果的に水が盛り土の方向へ流れ込むようになっていたため、全く影響がないとも言い切れないとする見解を示しています。
「ただし、まったく影響がないわけではない。盛り土とソーラーパネル造成地は最も近いところで20~30メートルほどしか離れていません。ソーラーパネル造成地のほうが標高は高くて工事用の取り付け道路があるのですが、それがちょうど雨どいの役割をして、水が盛り土のほうへ流れ込むようになってしまっていた。その集水面積は軽視できません」
元々、この土石流のあった地域を含めて、メガソーラー施設の建設には環境への影響などを理由に反対する声が多く、そうした背景も今回の土石流の原因なのではないかという声につながっている面もあるようです。
熱海の土石流、産業廃棄物の混入した計画の何倍もの盛り土が原因、更にその山頂部にあるソーラーパネルを作る為に広範囲木を伐採し、保水力がなくなった為ってもう地質学者も言ってる。うちの地元も反対してるのにメガソーラー開発進んでるし全国各地でも…。ほんと嘆かわしい。今後水害も増えるかと
— 夕闇乙女 (@yuuyakemanto19) July 13, 2021
今回の土石流が発生した地区と似た環境に置かれている地域は他にもあるという事なので、同じような災害が発生しないように原因の究明は徹底的に行ってもらいたいです。
まとめ
今回は、2021年7月3日に静岡県熱海市で発生した大規模土石流による土砂災害についてまとめてみました。
この土石流は、熱海市伊豆山地区の標高300メートル付近の、盛り土と呼ばれる造成工事が行われた土地に、数日にわたる大雨によって大量の水が溜まって許容量を超えた事で土砂崩れが発生し、それが付近を流れる逢初川に流れ込むようにして発生したとみられています。
この土石流によって、少なくとも131棟の建物が被害を受け、7月17日の時点で、死者13人、安否不明者16人、その他、負傷者多数など甚大な人的被害が発生しています。
現在も、大勢の行方不明者や避難生活を余儀なくされている人々が残されている状況で、救助活動や復旧作業が続けられています。
この土石流の原因は、専門家による調査などにより、発生地点の盛り土が排水設備を設置しないなどの不適切な工法で造成されていた事ではないかとする見方が強まり天災ではなく人災ではないかとする見方が強まっています。
さらに、この盛り土工事を行った不動産業者(この一帯の土地の前の所有者)が、過去に何度も法令違反や契約違反などを繰り返していた事も明らかになり、この業者の責任を追及する声が強まっています。
一部からは、この盛り土地点のすぐ近くに建設されていたメガソーラー施設が大元の原因ではとの疑いも浮上していますが、これについては現在のところ関連性は低いとの見方が有力です。
今後の調査による正確な原因の究明が待たれます。
また、現在も多数の安否不明者と避難を余儀なくされている人々が残されているという事で、一刻も早く救助活動や復旧作業が進展する事が望まれています。