2011年3月11日に発生した東日本大震災で、福島第一原子力発電所がメルトダウンを起こし放射能が漏れる「福島第一原子力発電所事故」が発生しました。
この記事では、「福島原発事故」の原因や真実、直接的・間接的な死者、がん急増との関連、被爆した作業員の現在などについて詳しくまとめましたのでご紹介します。
この記事の目次
「福島原発事故」の概要
東日本壊滅の危機があった最悪の原発事故
「福島第一原子力発電所事故」は、2011年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)」の振動と津波の影響により、東京電力が運営する福島第一原子力発電所で起きた「炉心溶融(メルトダウン)」による放射性物質の拡散被害があった事故です。
原子力事故の深刻度を表す国際スケール「国際原子力事象評価尺度 (INES) 」において、「福島原発事故」は最悪のレベル7に分類されており、これは1986年4月26日に発生した人類史上最悪の原発事故「チェルノブイリ原発事故」と同等のランクとなります。
日付: 2011年3月11日
時間: 14時46分 (日本標準時)
場所: 福島県双葉郡大熊町大字夫沢字北原22番地
結果: 国際原子力事象評価尺度 (INES) レベル7(4月12日時点の原子力安全・保安院による暫定評価)死者
地震・津波による死者: 2人(4号機タービン建屋内)
その他の死者: 2人
原発による災害関連死を含めた死者: 1600人
負傷者
地震による負傷者: 6人
1号機・3号機の爆発による負傷者: 15人
被曝の可能性
従業員: 30人(100 mSvを超過した人数)
住民: 88人(除染を実施した人数)その他の負傷者: 19人
損害: 21.5兆円
引用:Wikipedia – 福島第一原子力発電所事故#収束へ
「福島原発事故」の原因~東京電力は大津波対策をしていなかった
福島原発事故、大津波により非常用電源を喪失
15メートル級の津波対策をしていなかった
「福島原発事故」が発生した原因は、「東北地方太平洋沖地震」による激震で発生した14メートル以上の大津波が押し寄せ、非常用電源を喪失したことにあります。
国際原子力機関 (IAEA) の調査団は事故後の調査により、日本は津波による原発事故の可能性を軽視していたことをしてきました。
実際には政府の地震調査委員会は2002年7月に三陸沖から房総沖にかけて巨大地震が発生する可能性を指摘し、発生した津波が最大で15.7 mに達すると試算していました。
しかし、東京電力は何も対策を講じておらず、原発事故が起きるとすれば人為的ミスか設計ミスによるものだと考えていました。
後述しますが、これが後に東京電力の経営陣が刑事罰を問われることになった理由であり、結果的に無罪が言い渡されたものの、「福島原発事故」は電力会社の経営陣の資質の重要性を改めて考えさせられることとなりました。
なお、「福島原発事故」の発生原因は津波だけではなく、巨大地震発生後に1号炉の原子炉建物内部から放射線量が急上昇していたことから、配管の一部が破断していたことも疑われています。
福島原発事故、吉田昌郎所長ら社員の死を覚悟した行動
現場を指揮した所長・吉田昌郎
1号炉は地震発生から約5時間で燃料が露出し始め、15時間後にはメルトダウンを起こしました。
東京電力福島第一原発の所長だった故・吉田昌郎さんは、原子炉を冷却するための注水を巡って東京電力の当時副社長だった武黒一郎さんの命令を無視し、独断で注水を開始したことで世間では英雄視されていました。
しかし、吉田昌郎さんらが被爆の危険性を犯してでも最悪の状況を招かないために行った注水は、すでに炉心が溶解した後のことで直接的な効果はなかった上、後の調査では炉心に海水は届いていなかったと言われています。
デブリ(溶融物)が崩壊熱を発し続けて格納容器の下のコンクリートを溶かして放射性物質が拡散されるのを防ぐために、海水を注入して水没させるという点では重要だったと言われています。
むしろ吉田氏がやったことで意味があったのは、現場に踏みとどまったことだろう。部下たちも「親分」の吉田が迷うことなく、死を覚悟して踏みとどまったので、浮足立たなかった。
復旧に必要なバッテリーその他の資器材や防護マスクや食料も極端に不足している中で、彼らが踏みとどまってベントや電気の復旧をしていなければ、原子炉は6つとも爆発し、燃料プールも全部溶融し、東日本が壊滅していた可能性がある。
こうした事実から、吉田昌郎さんら現場の社員は東日本壊滅から日本を救った英雄で間違いないでしょう。
もし現場の所長が吉田昌郎さんのような資質を持たない避難を優先する人だったとすれば、「福島原発事故」は「チェルノブイリ原発事故」を超える大惨事を招いていたでしょう。
「福島原発事故」の死者~放射能被ばくとがん発症の関連性
福島原発事故、東日本では甲状腺がんが増加
吉田昌郎さんは事故後に食道がんが見つかった
所長の吉田昌郎さんは体調が優れない中でも体に鞭を打って4号機燃料プールの補強工事の指揮を執っていましたが、人間ドックでの検査の結果食道がんが見つかり、2011年11月24日に入院しました。
12月1日にはがん療養のために所長を退任しましたが、吉田昌郎さんの総被ばく線量は約70ミリシーベルトであり、短期間でがんを発症させる可能性は低いため、被ばくと食道がんに因果関係は無いとされています。
とはいえ、被ばくは確実に吉田昌郎さんの体を蝕んだと思われ、慶應義塾大学病院にて2013年7月9日に享年59歳で亡くなりました。
なお、ほかの作業員も大勢被ばくしましたが、2018年12月時点で被ばくが原因でのがんによる労災認定されたのは6人で、甲状腺がんが2人、白血病が3人、肺がんが1人となり、ほかにも調査中の人が5人いました。
詳しくは後述しますが、「福島原発事故」後に関東から東北にかけて放射性物質・セシウムボールが大量に飛散したことが確認されており、東日本では大人に甲状腺がんの増加が認められました。
なお、福島県での子どもへの 甲状腺検査では被ばくとがん発症に関連性は見つかっていないとされています。
福島原発事故、強制退去区域で住民の自殺が多発
強制退去で自殺者が多数出ていた
季刊雑誌「NO NUKES voice(ノー・ニュークス・ボイス)」21号の巻頭リポートで、精神科医で作家の野田正彰さんが、福島第1原発事故後に自殺した男女3人について書いた精神鑑定書が公開されたていたことが2019年10月27日に伝えられました。
11年6月に牛舎の黒板に「馬鹿につける薬なし、原発で手足ちぎられ酪農家」「原発さえなければ」と書き残して亡くなった福島県相馬市の酪農家、菅野重清さん=享年54。
飯舘村で生まれ育ち、一度も他で暮らしたことがなく、原発事故で避難を迫られる中「おら、行きたくねーな」「ちいと俺は長生きしすぎたな」「嫌なものを見てしまったな」とつぶやき同年4月、102歳で命を絶った農家の大久保文雄さん。
飯舘村から福島市のマンションに避難後、「こんなところにいられない。早く(死んだ)じっちゃんのところへ行きたい」と漏らし、13年に自死した女性Aさん=享年84。
公開された3人の衝撃的な自殺理由はおそらく氷山の一角だと思われ、他にも住み慣れた土地と財産をすべて捨てて他所に強制移住となった住民の中には、同様に自殺の道を選んだ人はいることでしょう。
「福島原発事故」の真実~セシウムボールが東京にも飛散していた
福島原発事故、東京だけで2兆個のセシウムボール飛散
関東、東北圏に飛散しているセシウムボール
「福島原発事故」により被災地東北地方から東京や神奈川など関東圏にまで放射性物質であるセシウムボールが大量に飛散していることが確認されています。
これが最初に分かったのは、事故から2日後の3月15日に行われた気象庁気象研究所による調査で、大気中に通常では存在しない粒子があることが発見されました。
セシウムボールは関東一円に飛散したことも分かっている。東京理科大学理学部応用化学科で講師を務める、阿部善也氏が話す。
「関東の5つの自治体(非公開)から3月15日の微小粒子がついたフィルターの提供を受けて調べたところ、すべての地域からセシウムボールが見つかりました。微量ですが、放射能が半分になる半減期が億年単位のウランも含まれていました」
九州大学が行った調査によると、東京だけで原発事故後、2兆個のセシウムボールが降り注いだと推測される。
現在までにセシウムボールによる健康被害の報告は上がっていないようですが、関東から東北にかけて住んでいる人は、普段からマスクの着用や空気清浄機の使用などが勧められていますが、実際に気をつけている人の方が圧倒的に少ないでしょう。
311の福島原発爆発で放射性物質が大量に出て、東京神奈川を含む東日本一帯に死の灰が降ってきていることを政府マスコミは隠蔽している。現在もだだ漏れ状態だ。5年の潜伏期間が過ぎ、体調不良、突然死が激増する。呼吸で被曝するので、西へ逃げないと危険です。
— 不正選挙監視団 (@rigged_election) October 24, 2019
福島原発事故、「フクシマ50」とは
2020年3月に映画が公開される「フクシマ50(フクシマフィフティ)」
「福島原発事故」発生後、非常に深刻な放射線量を計測していた現場において、被害を拡大させないための収束作業に当たった作業員は、初期の人数にちなんで「フクシマ50」と呼ばれています。
最終的に参加した作業員は約2万人にのぼり、深刻な健康被害や死の危険もある収束作業に勇気を持って臨んだことは世界中から称賛されていました。
福島原発事故、原発作業員男性の証言
作業員は被ばくの恐怖と戦いながら収束作業に当たっていた
とある20代男性は下請け会社として要請に応じて福島原発事故の収束作業に参加しましたが、常に汚染物質により被爆する恐怖と戦っていたことを証言しています。
20代の男性 「目に見えるものであれば怖いものはないけど、触れるもの一個一個に汚染物質が付いていると思ったら、正直、触れるのは嫌じゃないですか。どこで汚染するか分からない。一回自分も汚染があった。(ゴム手袋が)破れた状態で手が汚染した。体に(汚染物質が)付いてるんじゃないか。家に帰って布団に入っても、布団に付いていたら、家の中が汚染した状態になっちゃうんじゃないか。」
収束作業の報酬が良かったため出稼ぎのように収束作業に参加した人が多かったと言われていますが、中には派遣会社が悪質なピンハネをしていたという話もありました。
命を削る代償としてはあまりにも悲惨な状況にあったようですが、こうした人びとのおかげで日本は本当に最悪の事態を逃れることができました。
福島原発事故、原発作業員に無償の定期健康診断を実施
定期健康診断を受けない作業員が急増
国が定めた健康に深刻な被害を出さない被ばく線量の目安として、1年間で50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルト、「福島原発事故」のような緊急性の高い作業に当たる場合は特例として250ミリシーベルトまでとしています。
実際に収束作業に当たった作業員の被ばく線量を計測してみると、特例の250ミリシーベルト超えが6人、100ミリシーベルト以上250ミリシーベルト未満が168人もいました。
こうした深刻な健康被害が考えられる作業員にはがんや甲状腺の病気、白内障などの定期検診が無償で行われてきました。
また、100ミリシーベルト以下の作業員に対しては、3、4年に一度の無料の定期検診を行ってきましたが、仮に病気が見つかっても治療代が出るわけではなく、あくまで国の調査を兼ねた検診だったことから受診しない人が急増しました。
福島原発事故、原発作業員は使い捨てされた
特例の250ミリシーベルトは途中から引き上げられた
国は既存の被ばく線量制限では作業が追いつかないと判断し、特例である250ミリシーベルトに引き上げました。
しかし、作業員に対して何か補償があるかと言えば特に無く、定期検診で例え病気が見つかったとしても治療費が支給されるわけではありませんでした。
こうした体制から作業員の多くは国に「使い捨てにされた」と証言している人も少なくないようです。
20代の男性 「国もしっかりして欲しいなと。やるんだったら、とことんやって欲しい。結局、作業員は捨て駒みたいな感じで、使ってだめだったら切り捨て切り捨てなんで。そう考えると、原発で働いてて本当に良かったのかなと、振り返っちゃいますよね。」
(中略)
元作業員の男性 「結局、末端の人間は関係ないという考え方なんだと思いますよ、使い捨て状態。使える時に使って、あとは関係ないから何も聞かないし、という形なんじゃないですかね。」
(中略)
元原発作業員 「私らみたいなのは、切り捨てなんですよ。それで命を懸けていたのかと言ったら、ほんと情けないですね。」
「福島原発事故」発生直後の作業員の日当は24000円ほど出ていたと言われていますが、現在では他の仕事と変わらない8000円にまで落ちているようです。
こうした数字を見る限り、やはり中抜き業者がいるということなのでしょう。
「福島原発事故」その後と現在~東京電力旧経営陣に無罪判決
福島原発事故、津波対策をしなかった経営陣は無罪に
2019年9月19日に、東京地方裁判所は「福島原発事故」において業務上過失致死傷罪で起訴されていた東京電力の旧経営陣、勝俣恒久元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長3人に対し、無罪判決を言い渡しました。
この裁判は1986年に起きた「チェルノブイリ原発事故」以来の原子力事故の刑事裁判であり、世界が判決結果に注目を集めていました。
裁判は2017年6月に始まり、検察側は5年の禁錮刑を求刑していた。
検察側は、3人の被告は2002年の時点で15メートル級の巨大津波が原発をおそう危険性があると警告されていたが、この情報を無視し、対策を講じなかったと主張した。
しかし、東京地裁は今回、3人が津波を予見できたとしても十分な対策を行えたかは明らかではないとして、無罪を言い渡した。
「東日本大震災」のような巨大地震が起きることは可能性は考えられても、実際に起こるとは誰もが想像すらしていなかったのでしょう。
しかし、「東日本大震災」が起きたことによって国民の目は覚め、今後起きるであろう南海トラフ大地震などの震災に備えるきっかけになりました。
福島原発事故、廃炉作業は難航していた
廃炉で最も困難だとされているのがデブリ(溶融核燃料)の取り出し作業で、1~3号機のデブリは合計880トンあるとされており、新たな機器の開発が急がれるなど作業は難航しています。
海外の事例でも、廃炉の姿や工程は異なる。1957年に火災事故を起こし、放射能汚染をもたらした英国のウィンズケール(現セラフィールド)原子力施設は、作業がしやすいよう放射能が半減するまで100年以上待ってから施設を解体する予定だ。86年に炉心溶融で大量のデブリが発生した旧ソ連のチェルノブイリ原発では、デブリの取り出しを断念し、「石棺」と呼ばれるコンクリートの構造物で覆い、長期保存することになった。
もしかすると「チェルノブイリ原発事故」のように廃炉を諦めて石棺による封じ込めを選択する時が来るかもしれませんが、現状では廃炉の方向で進められています。
特に放射性物質が含まれる汚染水の問題は深刻であり、現在は仮設のタンクに貯めていますが、2019年9月に環境相兼原子力防災担当相の原田義昭さんが「海に放出するしかないかもしれない」と発言して物議を醸していました。
ネット上ではすでに汚染水の放出がされていることになっていますが、週刊誌等で発せられた話題であり信ぴょう性はありません。
現在も福島原発は毎時1000~6000万ベクレルの放射能漏れ。汚染水は毎時8.3億ベクレルを海に流している。東京湾は汚染済み。海外メディアは強い警告を発している。戦犯の一部⇒電力会社、電気事業連合会、NUMO(原子力発電環境整備機構)、政府広報、電通、マスコミ、自称保守派等々。
— Yaxaveh (@yaxaveh) October 23, 2019
「福島原発事故」についてまとめると…
・福島原発事故の放射能被ばくにより、がんや白血病で亡くなった原発作業員が労災認定されている
・福島原発事故後、東京でも2兆個のセシウムボールが降り注いだ
・福島原発事故の責任を取り起訴された東京電力旧経営陣は、2019年9月に無罪が確定している
東日本壊滅という日本史上最大の危機でもあった「福島原発事故」についてご紹介してきました。
世間では「東日本大震災」を含めて「福島原発事故」は過去のこととなっていますが、東北や関東圏の人びとにとっては特に現在も深刻な影響を受け続けている長期的な災害となっています。