YouTuberのヒカルさんが「オープンマリッジ」を宣言して物議を醸しています。
この記事ではオープンマリッジのルールや契約書の作り方、相手への切り出し方、慰謝料など法的な問題の可能性、オープンマリッジを公言する芸能人や有名人を外国人と日本人ごとにまとめました。
この記事の目次
オープンマリッジは配偶者以外との恋愛や性行為を夫婦間で認める結婚の形

「オープンマリッジ」とは、結婚という枠組みを維持しながら、夫婦双方の合意の上で他のパートナーとの恋愛や静的関係を認めるという従来の結婚観を大きく超えた結婚の形で、近年の夫婦関係の多様化を象徴する言葉として注目を集めています。
オープンマリッジは、直訳すると「開かれた結婚」を意味します。その核心は、夫婦間の絶対的な合意に基づき、互いが配偶者以外の人物と恋愛関係や性的関係を持つことを認め合う点にあります。
これは、パートナーへの不誠実さから生じる「不倫」や「浮気」とは、その前提となる合意の有無において根本的に異なります。
この概念は、1970年代にアメリカの社会学者オニール夫妻によって提唱されたもので、夫婦が所有欲や嫉妬心に縛られず、個々の人間としての自律性を尊重し合う新しい結婚スタイルとして提示されました。
日本では2025年9月にYouTuberのヒカルさんが動画で、同年5月に結婚した進撃のノアさんとの結婚関係をオープンマリッジにする事を宣言して物議を醸しています。
ここでは、そんな新しい結婚関係の形である「オープンマリッジ」とは何かについて詳しく紹介していきます。
オープンマリッジは「ルールづくり」が重要とされる

オープンマリッジが単なる「公認の浮気」とならずに、健全な関係として機能するために絶対に不可欠なのが、夫婦間での明確かつ詳細なルールの設定です。
このルールは、お互いの信頼関係を維持し、予期せぬトラブルや感情的な衝突を避けるための生命線となります。
ルール作りの前に、まず「なぜオープンマリッジを望むのか」、「現在の夫婦関係をどうしたいのか」、「この関係に何を求めるのか」といった根本的な動機や目的を、時間をかけて徹底的に話し合う必要があります。
その上で、以下のような具体例を参考に、2人だけの具体的なルールを定めていきます。
婚外パートナーとの関係性の範囲についてのルール
・どこまで許容するか:デートのみか、キスやそれ以上の身体的接触はOKか。性的関係は認めるか。
・感情の境界線:恋愛感情(プラトニックなものを含む)は許されるのか、それともあくまで性的な関係に限定するのか。
・関係の継続性:一夜限りの関係のみか、継続的なパートナー(セカンドパートナー)を持つことも認めるか。
相手の選び方に関するルール
・対象者の制限:共通の友人・知人、職場の同僚などは避けるべきか。
・相手のステータス:独身者限定か、既婚者もOKか。
・相手の素性:事前に相手の身元や情報をパートナーに共有する必要はあるか。
情報共有(報告・連絡・相談)のルール
・連絡の頻度:婚外パートナーと会っている最中に、配偶者に連絡を入れる義務を設けるか。
・“Don’t Ask, Don’t Tell” (聞かない、言わない):お互いの婚外活動について一切情報を共有しないという選択肢もありますが、不安や疑念を生む原因にもなり得ます。
安全と健康に関するルール
・定期的な検査:数ヶ月に1度など、定期的に性感染症の検査を受けることを義務付ける。
夫婦関係に関するルール
・場所のルール:自宅(特に寝室)に婚外パートナーを連れてくることは禁止する、など。
・経済的なルール:婚外パートナーとの交際費に上限を設けるか、家計から支出しない、など。ここにテキストを入力
感情のケアと緊急時のルール
・拒否権(Veto Power):どちらか一方が、相手の婚外パートナーや関係性に対して「NO」と言える権利を持つか。この権利の行使条件も明確にしておく必要があります。
・一時停止・中止のルール:どちらかが精神的に辛くなった場合や、夫婦関係に危機が生じた場合に、オープンマリッジを一時的に停止、または完全に中止する条件を決めておきます。
これらのルールは、1度決めたら終わりではありません。関係性の変化や時間の経過とともに、2人の気持ちも変わっていきます。定期的にルールを見直し、柔軟に改訂していくプロセスそのものが、オープンマリッジを継続する上で最も重要なコミュニケーションとなります。
オープンマリッジでは契約書を作っておいた方が良いとされる

オープンマリッジという特殊な関係性を築くにあたって、口約束だけでは時間が経つにつれて認識のズレが生じたり、「そんなつもりじゃなかった」というトラブルに発展したりするリスクが常に伴います。
そのため、話し合って決めたルールは契約書や合意書といった書面の形で残しておく事が強く推奨されます。
オープンマリッジで契約書を作成する目的
① 認識の齟齬を防ぐ:ルールを明文化することで、お互いの理解を一致させ、曖昧な部分をなくします。
② 合意の証拠:将来、万が一トラブルになった際に、夫婦間で明確な合意があったことの証拠となります。
③ 心理的な拠り所:ルールを破りそうになった時の抑止力や、不安になった時に立ち返るための拠り所として機能します。
契約書に盛り込むべき項目
基本的には、前述の「ルール作り」で話し合った内容を網羅的に記載します。
以下に、オープンマリッジの契約書の例を載せておきます。
オープンマリッジの定義:2人にとってのオープンマリッジがどのようなものであるかを定義する。
具体的なルール:夫婦間で決めたルールを条項として具体的に記載
契約違反時の対処:ルール違反があった場合にどうするか(例:オープンマリッジの一時停止、違反した側が一定期間婚外活動を自粛する、など)。
契約の見直し:契約内容を定期的に(例:半年に1度、1年に1度など)見直す時期や方法を定めます。
守秘義務:オープンマリッジの関係性や契約内容を、双方の合意なく第三者に口外しないことを定めます。
契約の終了:どのような場合にこの契約を終了させるか(例:双方の合意、離婚時など)を記載します。
署名・捺印:作成年月日を記載し、夫婦双方が署名・捺印します。
契約書の法的効力と注意点
ここで注意すべきは、オープンマリッジの契約書が日本の法律上、必ずしも有効とは限らないという点です。
日本の民法では、配偶者以外の者と性的関係を持つことは「不貞行為」(民法770条1項1号)にあたり、離婚原因や慰謝料請求の対象となります。
夫婦間で「不貞行為を認める」という契約を結んだとしても、それが公序良俗(公の秩序又は善良の風俗)に反するとして無効と判断される可能性があります。
特に、以下のようなケースでは無効と判断されやすいとされています。
② 契約内容が著しく一方に不利である場合。
③ 婚姻共同生活の平和を著しく乱すような内容である場合。
したがって、契約書はあくまで「夫婦二人の間の私的な約束事」としての意味合いが強く、法的な強制力を持つものではないと理解しておく必要があります。
しかし、万が一将来離婚や慰謝料請求の争いになった際には、「夫婦間にはこのような合意があった」という事実を裁判所に示す有力な証拠の1つとして機能する可能性はあります。
オープンマリッジの契約書の作成にあたっては、法的な有効性について過度な期待はせず、あくまで二人の信頼関係を維持するためのツールと位置づける事が肝要です。
より確実に法的な側面を考慮したい場合は、弁護士などの専門家に相談する事も1つの方法です。
オープンマリッジのパートナーへの切り出し方
オープンマリッジを実践する上で、最初の、そして最大の難関が、パートナーにその考えをどのように切り出すかです。
このデリケートな提案は、伝え方1つで相手を深く傷つけ、関係に修復不可能な亀裂を生じさせかねません。慎重な準備と、相手への最大限の配慮が求められます。
オープンマリッジを切り出す前の準備
自己分析:なぜ自分はオープンマリッジを望むのか? 性的な不満か、恋愛への憧れか、個人の自由か。その動機を深く掘り下げ、自分の言葉で明確に説明できるように整理します。「ただ他の人とも関係を持ちたいから」という短絡的な理由では、相手の理解を得ることは極めて困難です。
パートナーの価値観の理解:パートナーはどのような結婚観、恋愛観を持っているか。嫉妬深いタイプか、比較的寛容なタイプか。新しい考え方に対して柔軟か、保守的か。相手の性格や価値観を十分に考慮し、どのような反応が予想されるかをシミュレーションしておきます。
情報収集:オープンマリッジに関する書籍や記事を読み、メリットだけでなく、デメリットやリスクについてもしっかりと知識をつけます。相手から予想される質問に対して、誠実に、かつ具体的に答えられるように準備しておくことが重要です。
オープンマリッジの切り出し方ステップ① タイミングと場所を決める
・NGなタイミング:喧嘩の最中、相手が仕事で疲れている時、体調が悪い時、時間に追われている時は絶対に避けるべきです。
・ベストなタイミング:週末の夜など、2人ともリラックスしていて、邪魔が入らず、時間を気にせずじっくりと話せる時を選びます。自宅のリビングなど、安心できる環境が望ましいでしょう。
オープンマリッジの切り出し方ステップ② 伝える時の工夫と注意点
・前提として愛情を伝える:「あなたとの関係が一番大切だと思っている」「これからもあなたと夫婦でいたい」という、パートナーシップの継続が前提であることを最初に明確に伝えます。
・「私」を主語にする:「あなたは〜してくれない」という相手を非難するような言い方ではなく、「私は〜と感じている」、「私は〜という関係も考えてみたい」というように、自分の気持ちや考えとして伝える「アイメッセージ」を心がけます。
・「相談」、「提案」のスタンスで:「こうする事に決めた」という決定事項の報告ではなく、「こういう考え方があるんだけど、どう思う?」、「私たちの関係をより良くするために、1つの選択肢として話を聞いてほしい」というように、あくまで「相談」や「提案」という形で持ちかけます。
・正直かつ具体的に話す:なぜそう考えたのか、その背景にある自分の悩みや欲求(例:「セックスレスが続いていて、1人の人間として寂しさを感じている」、「あなたへの愛情とは別に、恋愛のときめきも感じてみたいという気持ちがある」など)を、勇気を持って正直に伝えます。
オープンマリッジの切り出し方ステップ③ 相手の反応への対応
・感情的な反応を受け止める:相手がショックを受けたり、泣いたり、怒ったりするのは当然の反応です。まずはその感情を否定せず、「そう感じるのは無理もないよね」、「傷つけてしまってごめん」と、相手の気持ちに寄り添う姿勢を見せることが最も重要です。
・その場で結論を求めない:このような重大な提案を、その場ですぐに受け入れられる人はいません。「すぐに答えを出さなくていい」、「時間をかけて考えてほしい」と伝え、相手に考える時間と精神的な猶予を与えましょう。
・対話を続ける覚悟を持つ:一度断られたからといって、諦めたり、逆に相手を責めたりしてはいけません。これは一度で終わる話ではなく、何度も、何ヶ月、場合によっては何年もかけて話し合っていくべきテーマであるという覚悟が必要です。
・第三者の助けを借りる:二人の話し合いが行き詰まるようであれば、夫婦カウンセリングなど、専門家の助けを借りることも有効な選択肢です。
この提案は、パートナーにとって「自分はもう魅力的ではないのか」、「自分だけでは満足できないのか」という自己否定のメッセージとして受け取られる危険性を常にはらんでいます。切り出す側は、相手への揺るぎない愛情と尊重を伝え続ける最大限の努力が求められます。
オープンマリッジと慰謝料をめぐる法的な問題

夫婦間の合意のもとに成り立つオープンマリッジですが、日本の現行法のもとでは常に法的なリスクと隣り合わせであることを理解しておく必要があります。
特に問題となるのが、「不貞行為」とそれに関連する「慰謝料請求」です。
オープンマリッジは日本の法律における「不貞行為」と見なされる
日本の民法上、「不貞行為」とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを指し、法定離婚事由の一つとされています(民法第770条第1項第1号)。
オープンマリッジにおける婚外の性的関係も、この定義に当てはまるため、原則として「不貞行為」と見なされます。
オープンマリッジの慰謝料請求への影響
夫婦間でオープンマリッジの合意があった場合、慰謝料請求はどうなるのかについてもみていきます。
・オープンマリッジにおける夫婦間での慰謝料請求
夫婦間で「婚外恋愛を互いに認める」という明確な合意(契約書など)がある場合、後になって一方の配偶者がもう一方の配偶者に対して「不貞行為だ」として慰謝料を請求することは、極めて困難になると考えられます。
なぜなら、慰謝料は「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的利益」が侵害されたことによる精神的苦痛に対して支払われるものですが、オープンマリッジの合意によって、その権利や利益を自ら放棄していると解釈されるためです。
ただし、例えば以下のような場合は請求が認められる可能性があります。
① 合意が真意に基づかない、脅迫や強制によるものであったと証明された場合。
② 合意の範囲(例:「一夜限りはOKだが、継続的な関係はNG」)を逸脱する行為があった場合。
③ 夫婦の一方が「オープンマリッジをやめたい」と合意の撤回を申し出たにもかかわらず、相手が婚外の関係を続けた場合。
・オープンマリッジにおける浮気相手(第三者)への慰謝料請求
オープンマリッジの合意がある夫婦の一方が、自分の配偶者と性的関係を持った第三者に対して慰謝料を請求できるか、という点については、判例の考え方が重要になります。
過去の裁判例では、「夫婦間で性交渉を容認する合意があり、かつ、第三者がその事情を知りながら性的関係を持った場合、その第三者は不法行為責任を負わない」と判断される傾向にあります。
つまり、浮気相手への慰謝料請求は認められない可能性が高いと言えます。
これは、夫婦が合意の上で婚姻関係の平和を一部放棄している以上、第三者がその平和を侵害したとは言えない、という考え方に基づきます。
・オープンマリッジの結果として離婚に至った場合の注意点
オープンマリッジを実践した結果、夫婦関係が悪化し離婚に至る場合、通常の離婚とは異なる問題が生じることがあります。
オープンマリッジが原因で関係が破綻した場合、どちらか一方に明確な「有責性(離婚の原因を作った責任)」があると断定しにくくなります。
そのため、慰謝料の算定が複雑になったり、協議が難航したりする可能性があります。
結論として、オープンマリッジの合意書は、夫婦間の慰謝料請求を困難にさせ、また第三者への慰謝料請求をほぼ不可能にする効果を持つ可能性が高いと言えます。
しかし、それはあくまで「合意が有効である」と認められた場合の話であり、合意の成立過程や内容によっては法的な保護を受けられないリスクも常に存在することを忘れてはなりません。
オープンマリッジの芸能人・有名人① 米国ではウィル・スミス夫妻が有名

オープンマリッジという概念が広く知られるきっかけの1つに、芸能人や有名人の言動があります。
彼らの発言は、社会に大きな影響を与え、多様なパートナーシップのあり方について議論を巻き起こしています。
日本では馴染みのないオープンマリッジですが、海外では、オープンな関係性を公言しているセレブリティが比較的多く存在します。
代表的なのが、ハリウッド俳優のウィル・スミスとジェイダ・ピンケット=スミス夫妻です。
ウィル・スミス夫妻は、長年にわたりお互いの自由を尊重する関係性であることを公言してきました。
ジェイだは過去に「ウィルと私はお互いに、何をしても良いの。だって私たちはお互いを信頼しているから」と語り、彼らの関係が単なる結婚ではなく、人生のパートナーシップであるとの考えを示しています。
その他、米国ではオープンマリッジを公言している芸能人・有名人としてハイウッド俳優のベラ・ソーンやエズラ・ミラー、歌手のウィロー・スミスなどが挙げられます。
オープンマリッジの芸能人・有名人② 日本ではYouTuberのヒカルが宣言

出典:https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/
日本では、社会的にマイナスなイメージが強く、オープンマリッジを公言する芸能人や有名人は極めて少ないのが現状です。
そんな中、2025年9月に人気YouTuberのヒカルさんが、妻である進撃のノアさんと共に「オープンマリッジとして生きていく」、「浮気OKです!」と宣言したことは、大きな衝撃をもって受け止められました。
ヒカルさんは動画の中で、離婚はしたくないが他の女性からの誘いを断るのが苦しくなった事などを理由に挙げ、夫婦で長時間話し合った結果、この結論に至ったと説明しました。
しかし、この宣言に対して、ネット上では「無責任だ」、「結局は自分の欲望を正当化したいだけではないか」といった批判的な意見が殺到し、チャンネル登録者数が一時的に20万人以上減少する事態となりました。
このヒカルさんのオープンマリッジ宣言に対しては主に以下のような批判的な意見が出ています。
合意の対等性への疑問
動画でのやり取りやその後の報道から、一部の視聴者は、妻であるノアさんがヒカルさんの強い要望を受け入れざるを得なかったのではないか、という印象を抱いたようです。
オープンマリッジが成立するための大前提である「真に対等な立場での、心からの合意」がなされているのか、という点に多くの疑問が投げかけられました。
公言する事の是非
プライベートな夫婦間の取り決めであるオープンマリッジを、ヒカルさんのように影響力の大きいインフルエンサーが公に宣言することの是非についても議論が巻き起こりました。
ヒカルさんが宣言をする事で、オープンマリッジが拡大解釈されて、何か社会的に大きな問題が引き起こされる可能性や、まだ経験の少ない若者や子供達の教育上良くない影響があるのではと危惧するような声が見られます。
まとめ
今回は、夫婦間の合意の元で、配偶者以外との恋愛や性交渉を認める新たな結婚の形である「オープンマリッジ」についてまとめてみました。
オープンマリッジは、セックスレス、価値観の相違、個人の自由の尊重といった、現代の夫婦が抱える様々な課題に対する1つのラディカルな解決策となり得ます。
徹底したコミュニケーションと相互尊重のもとに築かれた明確なルールを作成し、契約書を交わすなどすれば、従来の結婚の枠組みを超えた、より深く、正直なパートナーシップを築く事も可能かも知れません。
一方で、嫉妬という人間の本源的な感情、社会的な偏見、慰謝料など法的なリスク、相手への切り出し方など、乗り越えるべきハードルが極めて高い、茨の道でもあります。
軽い気持ちや、単なる性的な欲求不満の解消のためだけにこの道を選べば、それは単なる「公認の浮気」となり、関係の崩壊を招くだけでしょう。
オープンマリッジを公言している有名人・芸能人としては、海外ではウィル・スミス夫妻がよく知られています。そして日本人の有名人・芸能人では、YouTuberのヒカルさんがオープンマリッジを宣言して物議を醸しています。


















