乃木坂46の関連グループとして知られる「欅坂(けやきざか)46」のライブ衣装がナチス・ドイツの制服に似ていたことが問題となりました。
この記事では、欅坂46の衣装とナチス・ドイツの制服の比較と問題点、担当デザイナー、そして海外の反応などをまとめています。
欅坂46のプロフィール
出典:http://www.asagei.com/
名称:欅坂46 (けやきざか フォーティーシックス)
結成年:2015年
ジャンル:J-POP
事務所:欅坂46運営事務局
欅坂46は「乃木坂46」の関連グループとして2015年に結成された女性アイドルグループ。
欅坂46と、けやき坂(通称:ひらがなけやき)の2グループ体制で活動されています。
元々は、東京都港区に実在する坂道である「鳥居坂」を冠したグループ名でメンバー募集が開始されましたが、結成に際して「欅坂」の名称へと改名されました。
出典:http://cdn2.natalie.mu/
欅坂46のメンバーは10代後半から20代前半であり、一方、けやき坂46(ひらがなけやき)は、14歳から20歳までと比較的若いメンバーが中心となっています。
ナチス・ドイツ軍服に酷似した欅坂46の衣装が問題に
出典:http://jamsoku.com/
ナチスドイツ軍服に酷似していると指摘された衣装
黒のマントに鷲のマークのついた制帽。ナチスドイツの軍服を想起させるとの物言いがつきました。
ナチス・ドイツ軍服騒動の流れ
2016年10月22日に横浜アリーナで行われたライブイベント「PERFECT HALLOWEEN 2016」に欅坂46が出演。その際に欅坂46メンバーが着ていた衣装(上の写真)がナチス・ドイツの軍服に似ているとネットで指摘がありました。
その後、2016年11月1日、日本のアイドルグループ「欅坂46」のライブ衣装がナチス・ドイツの軍服に酷似しているとの抗議が、ユダヤ系団体により行われていたことが報じられました。
日本のアイドルグループがコンサートで着た衣装が、ナチス・ドイツの軍服に似ているとして物議を醸し、アメリカのユダヤ系人権団体が「強い嫌悪感」を示すとともに、グループが所属する音楽会社とプロデューサーに謝罪を求めました。
先月22日、日本のアイドルグループ欅坂46が、横浜市で行ったコンサートで着た衣装がナチス・ドイツの軍服に似ているとして、インターネット上で物議を醸し、海外のメディアも報じました。
これについて、アメリカ・ロサンゼルスに本部を置くユダヤ系の人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」が31日、声明を発表して「強い嫌悪感」を示しました。
ナチス・ドイツ軍服との比較
ユダヤ系団体により「ナチス・ドイツの軍服に酷似している」との抗議を受けた欅坂46メンバーのライブ衣装は本当に「酷似」していたのでしょうか?
以下が、ナチス・ドイツの軍服の画像です。
出典:http://hollywoodprop.com/
軍服画像1
オールブラックのカラーと、右腕の腕章(通称:ハーケンクロイツ)、そして制帽に輝くシンボルの鷲のマークが特徴的とされています。
出典:http://67.media.tumblr.com/
軍服画像2
左から2番めのマントを着用した画像が今回問題視された欅坂46の衣装と酷似しているとされています。
以下が、問題の欅坂46のライブ衣装です。
出典:http://www.j-cast.com/
ライブ衣装1
ナチス・ドイツの軍服を想起させると批判されるのも無理はないほど似ています。
出典:http://livedoor.blogimg.jp/
ライブ衣装2
外套(マント)を外した衣装もナチス・ドイツの軍服をモデルにしていることが一目で分かり、帽子のマークまで一致しています。
ここまで酷似していると、さすがに言い逃れはできないのではないでしょうか。
衣装担当のデザイナーとは?
衣装デザイナーは尾内貴美香(おない きみか)さん
欅坂46の1stシングル「サイレントマジョリティー」など欅坂46の衣装を多く手掛けています。
Twitter
http://twitter.com/kimikatrock
欅坂46の衣装がナチスドイツの軍服と酷似しているとの指摘に関しては以下のコメントを出しています。
尾内氏は10月24日、「衣装がナチスっぽいとネットがザワついていますが、大丈夫でしょうか?」とのファンからの指摘に対し「デザインソースは全然違うところなのですが…」と、ナチスをモチーフにしたものではないことを明かしながら、「ザワつくほど話題性がある欅はすごいですね」とコメント。
何が問題となったのか?
出典:http://livedoor.blogimg.jp/z
デイリー・ミラー紙の記事
イギリスの有名大衆紙である「デイリー・ミラー」も取り上げた今回の騒動。有名メディアの報道により世界中に騒動が知れ渡りました。
イギリスの有名大衆紙「デイリー・ミラー」が取り上げるまでに発展した今回の騒動。
一体、何が問題とされたのでしょうか?
ナチスは第二次世界大戦でユダヤ人を虐殺したことで「ナチスは悪の象徴」という思想があります。
ナチスが第二次世界大戦でユダヤ人を殺戮した。その軍服や敬礼や思想を踏襲してはいけない・・・きっと、多くの日本人はそう認識しているでしょう。
また、近現代史研究家の辻田真佐憲(つじた まさたか)さんが現代ビジネス上でご考察を展開されています。
出典:https://pbs.twimg.com
辻田真佐憲氏(画像右)
ひとつは、情報環境の変化である。SNSの普及により、どんな情報でもすぐに拡散されて「炎上」し、場合によっては海外にまで波及してしまう。これでは、日本固有の事情は通用しなくなる。
もうひとつは、政治情勢の変化である。現在世界では排外主義が広がっている。日本でも、レイシストの集団がハーケンクロイツを掲げて街頭デモを行ったことがある。こうしたなかで、ナチズムの消費はもはやブラックジョークとしても成り立ちにくくなっている。
それに加え、「欅坂46」があまりにメジャーで目立ったグループであること、今回のコスチュームにあまりに必然性がなかったことなども「炎上」の一因だろう。要するに、あれだけの大組織の運営にしては、あまりに不用意だったということに尽きる。
今回のコスチューム騒動は、現在までの情報を見る限り、単に「認識不足」の結果であると考えられる。当事者たちに何かの信念があったならば、また議論の余地もあっただろうが、実際はそうではあるまい。
サイモン・ヴィーゼンタール・センターの抗議にあわててすぐに謝罪して幕引きを図った。この対応がすべてを表している。
とはいえ、今回の「欅坂46」のコスチュームに政治的な意図があったとは考えにくい。女性アイドルがナチス・ドイツの軍服らしきものを着て踊ったからといって、何の意味があるというのだろう。むしろ、実際にそうなったように、「クールジャパン」政策にとってマイナスの効果しかない。
引用:欅坂46「ナチス風衣装」の世界的炎上、いったい何が問題なのか?(辻田 真佐憲) | 現代ビジネス | 講談社(3/3)
つまり、今回の騒動の問題点は、わざわざナチス・ドイツの軍服に酷似している(と受け取られかねない)ような衣装を使う必然性が存在しなかったことや、排外主義が高まるなかでSNSによる拡散が行われてしまったことにあるということのようです。
出典:http://www.tujimoto.jp/
辻元よしふみ氏(画像中央)
「軍装・服飾史カラー図鑑」(イカロス出版)の著者で服飾史評論家の辻元よしふみ氏はこう分析する。
「ワンピースやマントは確かに黒色で、ナチスの親衛隊をイメージさせなくもありませんが、デザイン的にはごく平凡。帽子もどこにでもある19世紀以来の官帽子で、これがダメなら世界中のお巡りさんや警備員が訴えられます。ただ一点、帽子に付いていた“銀色のワシ”が決定的にアウトです」
また、衣装を担当したデザイナーやそれにOKを出した関係者の知識の無さ(認識不足)の結果、引き起こされてしまったのが今回の騒動であるとのご考察がなされています。
欅坂46のナチス風衣装に対する海外の反応は?
ライブ衣装がナチス・ドイツの軍服を想起させるとして、ユダヤ系人権団体「サイモン・ヴィーゼンタール・センター(SWC)」から謝罪が求められることとなった今回の騒動。
その後、欅坂46の運営会社や総合プロデューサーの秋元康氏が公に謝罪をする事態にまで発展しました。
サイモン・ヴィーゼンタール・センター(SWC)
出典:https://upload.wikimedia.org/
サイモン・ヴィーゼンタール・センター
サイモン・ウィーゼンタール・センター(英:Simon Wiesenthal Center、略称SWC)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州のロサンゼルスにある寛容博物館を運営する組織。
同センターはホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の記録保存や反ユダヤ主義の監視を行い、国際的影響力を持つ。米ロサンゼルスに本部を置き、エルサレム・ニューヨーク・トロント・マイアミ・シカゴ・パリ・ブエノスアイレスなどで事務所を運営。民間の寄付で運営される非政府組織で、2012年は2億6000万ドルの寄付を受けた。
サイモン・ヴィーゼンタール・センターから出された謝罪要求文書の内容は次のとおりです。
「10代の若者がナチス風の衣装を着てステージや観客席で踊っているのを見ることは、ナチス大量虐殺の犠牲者に多大な苦痛を引き起こす」
「仮にグループ(欅坂46)に傷つける意図がなかったとしても、当該パフォーマンスはナチス犠牲者の記憶をおとしめるもので、ネオナチの感情が高まっているドイツやその他の国々の若者に誤ったメッセージを送ることになる。ソニーのような国際的ブランドには、もっと良いものを期待したい。ソニーは日本に恥をかかせている」
サイモン・ヴィーゼンタール・センターは、今から20年ほど前の1995年1月に、文藝春秋社の月刊誌「マルコポーロ」を巡る騒動で、同誌を廃刊へと追い込んだ過去を持つ影響力の強い団体とされています。
イギリス大衆メディアの反応
出典:http://a2010.kiosko.net/
イギリス紙「デイリー・ミラー」
イギリスの大衆紙である「デイリー・メール」やゴシップ誌である「デイリー・ミラー」が立て続けに報じた今回の騒動。
同誌の読者からは、「日本のアイドルがナチスの格好をしている」「信じられない」「(ホロコーストの過去を)軽く考えすぎ」との批判の声が上がったとされています。
まとめ
クールジャパン戦略を担う日本のアイドル業界。その中心にいる欅坂46関係者が起こした今回の「ナチス・ドイツ軍服酷似」騒動はヨーロッパで大きな話題となりました。
ただ、欅坂46のメンバーのほとんどはナチス・ドイツにより行われたホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)の歴史に関して、今回の騒動で初めて知ったのではないでしょうか。
何も知らなかったであろう彼女たちを責めても仕方がありません。今回のような軽薄なミスを犯したデザイナーや衣装案にOKを出した関係者が厳しく責任追及され、再発防止に努めることを願うばかりです。