1912年4月14日の夜から4月15日にかけて当時世界最大の豪華客船・タイタニック号が沈没し、1,513人が亡くなる「タイタニック号沈没事故」が発生しました。
この記事では、事故の原因や真実、生存者の現在などについて詳しくまとめました。
この記事の目次
「タイタニック号沈没事故」とは
タイタニック号は世界最大の豪華客船だった
処女航海中に氷山に激突し沈没したタイタニック号
タイタニック号はイギリスの海運会社ホワイト・スター・ライン社と造船会社ハーランド・アンド・ウルフ社によって造船され、世界に先駆けて大西洋横断航路を目指す3隻の姉妹船の内のひとつでした。
工員14000人により3年がかりで製造されたタイタニック号は、世界で最も巨大な動く製造物として注目を集め、そのため処女航海には有力な資産家も乗船していました。
全長268メートル、全幅28メートルのタイタニック号は、29基のボイラーを159個の石炭炉で駆動させ、最高速度23～24ノットで航行可能だと謳われ、船業界誌「シップビルダー」によれば「まず間違いなく沈まない船」だと太鼓判を押されていました。
しかし、実際のタイタニック号の設計は欠陥だらけであり、4本ある巨大な煙突の内1つは外観のバランスを整えるためのフェイクでした。
この当時、ホワイト・スター・ライン社はライバル会社だったキュナード・ライン社と業界の覇権争いをしており、何が何でも先にタイタニック号を完成させる必要があり、その結果が後世に語り継がれ映画にもなった「タイタニック号沈没事故」を引き起こしてしまいました。
タイタニック号沈没を題材にした映画「タイタニック」が大ヒット
ディカプリオが世界的ブレークを果たした映画
1997年に公開されたジェームズ・キャメロン監督によるハリウッド映画『タイタニック』は、興行収入10億米ドルを超えてギネスブックに載り、作品中に使用された音楽はサウンドトラックとして世界で史上最大の売上枚数を叩き出しました。
貧しい出身の青年・ジャックを演じたディカプリオはこれが出世作となり、資産家令嬢ローズとの悲恋を熱演して世界中を感動の渦に巻き込みました。
「タイタニック号沈没事故」の原因と真実
タイタニック号が沈没した原因は氷山への衝突
タイタニック号が衝突したと思われる氷山
タイタニック号が沈没した直接的な原因は、漂流していた氷山への激突であり、船体の横腹に大きな損傷をしたことから6つもの水密区画に海水が大量に流れ込み急速に浸水しました。
海水の侵入が4つの水密区画までならなんとか沈没を免れた可能性があると言われています。
タイタニック号沈没の原因は乗組員の過失もあった
乗組員は危険の察知ができていなかった
タイタニック号の無線オペレーターは、当時海上に漂っていた大きな氷についての警告を6件受信しており、乗組員の中にもその事実を知っている人が複数いました。
当時の北アメリカの海を漂っていた氷の規模は過去50年間の観測史上最大規模であり、無線オペレーターは警告を乗組員で共有し、とくに見張り役は最大限の警戒を払うべきでしたが、その連携は全くできていませんでした。
タイタニック号が何マイルもある巨大な氷山に向かっていることを乗組員の誰もが察知しなかったため、視界の悪い夜に「タイタニック号沈没事故」は起きてしまいました。
もし氷山への接近が見通しの悪い夜で無ければ防げていたことでしょう。
タイタニック号沈没の本当の原因は航海前の火災？
2017年1月1日にイギリスのチャンネル4で放送されたドキュメンタリー番組『タイタニック：新たな証拠』において、タイタニック号の研究をしてきたセナン・モロニーさんが沈没の本当の原因は火災の可能性が高いことを示しました。
セナンさんはタイタニック号に残されていた火災の跡の写真を公開し、沈没の原因は氷山激突前に起きていた火災が主な要因だったと指摘しています。
モロニー氏は航海に出る前に撮影されたタイタニック号の写真で、船体の側面に黒い焦げ跡があると指摘し、航海前の火災によって船の構造がすでにもろくなっており、そのために氷山との衝突が沈没につながったのではないかと話している。
モロニー氏の発見は、オハイオ州立大学工学部ロバート・エッセンハイ教授の仮設をさらに前進させたものだ。2004年にエッセンハイ教授は2004年、タイタニック号の船員が船の速度を上げようとしたのは、大規模な火災が発生したからではないかと指摘している。
「船の速度を上げたということは、何か重要な理由があるということです。例えば石炭庫で火災が発生し、航海中は火災がそれ以上広がらないように食い止めて港に着いた後で消そうと考え、急いで速度を上げたのかもしれません」と、科学専門誌「サイエンス・デイリー」がエッセンハイ教授の理論を紹介している。
つまり、火災により船体がもろくなっていなければ氷山に衝突した際の損傷がもっと小さかった可能性もあり、沈没は免れた可能性もあったのかもしれません。
セナンさんは乗組員の過失と火災、そして氷山の激突などいくつかの問題が重なってタイタニック号は沈没したと語っています。
タイタニック号が速度を上げた原因は社長命令？
氷山のある海域を全速力で抜けようとしていた
「タイタニック号沈没事故」において不可思議な点として、タイタニック号は氷山衝突以前に航行速度を上げていたことがありました。
これは、ホワイト・スター・ライン社の社長だったジョセフ・ブルース・イズメイが、氷山が漂流していた海域を航路として通ることを知っていたため、タイタニック号を全速力で航行させて氷山をかいくぐるようにスミス船長に伝えていたと言われています。
「タイタニック号沈没事故」死者が増えた原因とは
タイタニック号の死者が増えた原因① 伝達不足
氷山激突から2時間も乗客には伝えられてなかった
タイタニック号は世界最大の豪華客船で処女航海ということもあり、約3500人の定員に対して2200人あまりが乗船していました。
しかし、タイタニック号が氷山に激突してから2時間が経過してもその事実は多くの乗客に伝えられず、甲板に落ちていた巨大な氷の塊でサッカーをしている人がいるほどでした。
沈没の危機が迫る中、社長であるジョセフ・ブルース・イズメイを筆頭に重要人物など1等乗客から先にボートでタイタニック号を脱出しており、それでも1等乗客の中には海水温がマイナス2度前後と言われた大西洋上の夜の海に木製ボートで出るのを嫌がる人もいるほどでした。
なお、庶民などの3等乗客にはそもそもボートでの脱出の機会は与えられませんでした。
タイタニック号の死者が増えた原因② 救命ボート不足
乗船者の半分しかボートの定員は無かった
タイタニック号は3種類のボートを20隻搭載していましたが、これは客船の規定に設けられた数よりも圧倒的に少ない数でした。
定員65名の木製ボートが14隻、定員40名の木製ボートが2隻、船底が木製で側面がキャンバス地の定員47人の折りたたみ式ボートが4隻しかなく、定員の合計は1178人でした。
乗員乗客合わせて2200人あまりがいたことから約半数しか助からないことになりますが、実際は定員数に達する前にボートが出発していたためより多くの死者を出す結果となりました。
乗員が救命ボートの取り扱いの説明を受けていなかったことも、死者の拡大に影響しました。
「タイタニック号沈没事故」で犠牲となった著名人
犠牲となった著名人① イジドー・ストラウス
自分よりも子供や女性の命を優先させた実業家
映画『タイタニック』では、ジャックとローズ以外にもタイタニック号に乗り合わせていた人たちの最期も描かれていましたが、その中で沈みゆく船の客室でベッドに横たわり、最期の時を待つ老夫婦の姿が印象的に描かれていました。
この老夫婦はアメリカの富豪、イジドー・ストラウスとその妻であるアイダ・ストラウスであり、イジドーはアメリカの大手百貨店「メイシーズ」の経営者として知られています。
イジドー夫妻は脱出用のボートに案内されたにも関わらず、子供と女性を先に逃がすことを優先させて乗船を拒否し、乗船を促されたアイダも船を降りてイジドーと最期を迎えることを選びました。
事故後、その死を悼み、メイシーズの社員たちは、募金活動を行い、記念碑を作って、メイシーズの玄関に掲げた。 そのお披露目に集まった従業員と家族の数は、なんと5000人に及んだという。
自らの命を顧みず、見ず知らずの人たちのために生きる権利を譲った夫婦。 やがて目撃した生存者たちの証言が新聞に載り、夫婦の最期の時の様子は、人々に広く知られることとなった。
「タイタニック号沈没事故」から1年が経過し、ニューヨークにはイジドー夫妻の名前を付けた公園が作られ、その開園式には街中の人々が集まって2人の死を悼んだと言われています。
犠牲となった著名人② マーガレット・ブラウン
映画『不沈のモリー・ブラウン』のモデルとなった英雄
タイタニック号に乗船していたマーガレット・ブラウンという女性は、自らの命の危険を顧みずに一度脱出したボートを現場に戻させて救助活動をしたことで、後に『不沈のモリー・ブラウン』という映画のモデルになりました。
このマーガレットは映画『タイタニック』において、貧困階級の出身のジャックに上流階級の作法を色々と教えてあげていた女性です。
1等乗客で女性だったマーガレットには当然脱出用ボートがいの一番に用意され、タイタニック号を早くに脱出していました。
しかし、海に落ちている人々を見て、ボートに定員の空きがあることから少しでも人の命を救おうと、指揮をしていた船員の大反対を押し切って同乗していた女性らとオールを漕ぎ、数キロも戻って救助に当たりました。
それでも、海に落ちた多くの人びとは低体温症ですでに亡くなっており、マーガレットたちが助けることができた人は3人だけでした。
マーガレットたちを始め、避難ボートの多くは救助に向かっていた客船カルパチア号に収容されて、最終的に711人が救助されました。
「タイタニック号沈没事故」生存者のその後
生存者のその後① ジョセフ・ブルース・イズメイ
タイタニック号沈没の元凶を作った社長
ホワイト・スター・ライン社の社長だったジョセフ・ブルース・イズメイは、ライバル社に先駆けるために欠陥だらけのタイタニック号を製造させ、氷山が漂流している航路を全速力で航行させるなど、「タイタニック号沈没事故」の元凶を作った人物でした。
イズメイ本人もタイタニック号に乗船していましたが、氷山激突直後にいの一番に救命ボートに乗って逃げていますが、子供と女性を優先させたボートに乗っていたことについて、「自分でも気づかぬ内に乗っていた」と言い訳をしていたようです。
その後生き延びたイズメイは、ホワイト・スター・ライン社の親会社の重役に昇格していますが、世間からの糾弾は当然免れませんでした。
彼はその後25年間生きたが、本当は船もろとも沈んでいればよかったと思っていたかもしれない。あらゆる人々から事故の責任を問われた。テキサス州のイズメイという町は、改名さえした。彼をこのように批判する者もいた。「あいつは、けだものの欲望に一切のまともな感情を飲み込まれた薄汚いブタだ。……自分のことだけ考えているうちに、人間らしい心が退化したのだ」
生存者のその後② アントン・キンク
避難時の様子を手紙で残していたキンク
「タイタニック号沈没事故」の2週間後に、乗組員だったアントン・キンクは切符を購入したバーゼルの旅行会社に事故当時の様子について20ページの手紙を渡していました。
この手紙は長らく表に出ることはありませんでしたが、事故から100年あまりが経過した2012年に、タイタニック号の研究者であるスイスの研究者ギュンター・ベブラーにより発見され、ドイツ圏の日曜新聞「ゾンタークス・ツァイトゥング」にて掲載されました。
キンクさんは3等船室の乗船者の中で唯一家族全員が無事でしたが、それは最後から2番目の救命ボードに家族と飛び乗ったためでした。
「船員は、おまえはタイタニック号に残るべきだと私の胸に拳を当てて言った。私は彼と争う代わりに、隙を見てボート内に滑り込んだ」とキンクさんは手紙に書く。
さらにボートにはまだ十分ゆとりがあったとも指摘する。「４０人乗りのボートなのに１７人しか乗船していなかった。もっと多くの人を救助できたはずだ」
そのボートからは、「２０００人もの人々の叫び声が聞こえた」。「その叫び声と、雷のような唸りと共に大洋に飲み込まれていくタイタニック号の中から聞こえる空気の轟音。それらが次第に消えていった」
その後の静けさとの対比はキンクさんの胸を打つ。「霧ひとつない美しい夜だった。星は輝き、海はあくまで静かだった。もしかしてチューリッヒ湖上にいるのではと思うくらいだった」
救命ボートに定員の空きが多くあったのは、誰もがパニックに陥っていて早くにボートを海上に下ろしていたためかもしれませんが、定員が埋まれば転倒する可能性も考えたのかもしれません。
生存者のその後③ ライトラー2等航海士
人命救助のスーパーマン
乗組員だったライトラー2等航海士は、救命ボートが転倒した際に持ち直させ避難している人々の命を救った人物です。
また、事故後に入隊したイギリス海軍においての第二次世界大戦中に、孤立した130人もの友軍を救出させた切れ者としても知られています。
また、「タイタニック号沈没事故」において一等航海士だったマードックが不名誉な報道をされた時に、当時の乗組員3人と連名でマードック未亡人に真実を伝える手紙を書くなど、ライトラーは正義感の強い人物のようです。
生存者のその後④ ロウ5等航海士
マーガレットと共に救助のために戻った
タイタニック号の乗組員だったロウ5等航海士は、前述のマーガレットに説得されて唯一救助に戻ったボートを指揮していました。
映画『タイタニック』でも、終盤のシーンでのロウの活躍が描かれています。
ロウは第一次世界大戦中はイギリス海軍として戦いましたが、第二次世界大戦までには退役しており、自身の家を提供してボランティア活動に従事していました。
ロウはとても口悪くガサツな性格だと言われていますが、反面誰よりも正義感と奉仕の精神が強かったようです。
生存者のその後⑤ ボックスホール4等航海士
機転を利かせて救命活動のための灯りを作った
タイタニック号の乗組員だったボックスホール4等航海士は、ロウと同様にボートを戻して救助に向かおうとしましたが、乗客に猛反対されて断念せざるを得ませんでした。
それでも何か救助の力になろうと思ったボックスホールは、照明弾を打ち続けて暗闇だった冷たい海にあかりを灯しました。
この灯りのおかげで救助に来たカルパチア号が到着後すぐに救助を始めることができたと言われています。
ボックスホールは事故後も客船で航海士として勤務し続けましたが、生涯自分の船を指揮することは拒み続け、これは他の航海士も同様でした。
ボックスホールは自分の死後「タイタニックの沈没場所に散骨してくれ」と願っており、そのとおりに水葬されました。
生存者のその後⑥ ピットマン3等航海士
生涯航海士として生きた
タイタニック号の乗組員だったピットマン3等航海士は、ロウやボックスホールと同様に救助のためにボートを戻そうとしましたが、乗客の猛反対で断念しました。
しかし、冷たい海の上で体が冷えてしまわないように、乗客たちに帆布をかぶせてあげるなど気配りをして救助を待っていた優しい人物として知られています。
事故後も航海士を続けていたピットマンですが、年老いて視力が落ち、体力が無くなってからは客室担当として70歳で定年退職するまで船に乗り続けたと言われています。
「タイタニック沈没事故」の現在～残骸の腐食が進んでいた
映画『タイタニック』で人気だった船長のバスタブは朽ち果てた
2019年08月23日に深海探検家の国際チームが、14年ぶりに大西洋に沈むタイタニック号の現在の状況を調査しました。
3800メートルの深海に沈んだタイタニック号は腐食が進んでおり、映画『タイタニック』で人気だったスミス船長のバスタブは完全に朽ちて無くなっていたと伝えられています。
一方で腐食しない窓ガラスなどは綺麗な状態で残っているようで、もしかしたらその内タイタニック号の窓やその他パーツが採取され、オークションにかけられる日が来るかもしれません。
「タイタニック号沈没事故」についてまとめると…
・タイタニック号沈没事故で死者が増えてしまった原因に伝達不足や救命ボート不足があった
・タイタニック号は設計段階から欠陥だらけであり、沈没事故の生存者でもあるホワイト・スター・ライン社の社長だったイズメイは世間から糾弾された
・タイタニック号の残骸は腐食が進んでいるが、窓ガラスなどはきれいな状態で残っている
100年以上前に起きた悲惨な海難事故「タイタニック号沈没事故」について真実をご紹介してきました。
2014年には韓国で「セウォル号沈没事故」が起きて高校生を中心に299人が亡くなりましたが、この時も船長を始めとした乗組員の過失が大きく問題視されました。
大型客船に乗る時には、運営会社をよく調査する必要があるのかもしれません。
