2012年12月2日に山梨県大月市笹子町の中央自動車道上り線にある笹子トンネルにて、天井板のコンクリート板が落下する笹子トンネル天井板落下事故が発生しました。
この記事では、笹子トンネル天井板落下事故の詳細や原因、犠牲者と生存者、その後ネット上で噂された心霊情報などについて詳しくまとめましたのでご紹介します。
この記事の目次
「笹子トンネル天井板落下事故」の概要
笹子トンネル天井板落下事故は2012年12月2日午前8時5分頃に、山梨県大月市笹子町を走る中央自動車道上り線に所在する笹子トンネルで発生しました。
場所： 山梨県大月市笹子町 中央自動車道笹子トンネル（上り線）
日付： 2012年12月2日午前8時5分頃 (JST)
概要： トンネルの吊り天井の落下
原因： 天井アンカーボルトの脱落。
死亡者： 9人
負傷者： 2人
損害： 上り線（一宮御坂IC – 大月JCT間）下り線（勝沼IC – 大月JCT間）で長期通行止め
関与者： NEXCO中日本
対処： 笹子トンネルと同型のトンネル4カ所で、吊り天井の緊急点検の実施
引用：Wikipedia – 笹子トンネル天井板落下事故
笹子トンネルは吊り下げ式の天井版のある特殊なトンネルであり、この天井版は横5メートル、奥行き1.2メートル、厚み8センチおよび9センチ、一枚当たりの重さ約1.2トンのコンクリート板でした。
これら約270枚ほどが138メートルに渡ってV字状に崩落し、走行していた自動車3台が押しつぶされる形で下敷きとなり、内2台から出火しました。
当時、笹子トンネル内には約50台の車が走行していましたが、崩落した区間をたまたま走っていた3台が運悪く巻き込まれてしまい惨事となりました。
「笹子トンネル天井板落下事故」の犠牲者～死者9名の大惨事となった
笹子トンネル天井板落下事故の死者は9名、重軽傷者2名
9人が死亡し、内5名はシェアハウスの仲間
笹子トンネル天井板落下事故発生後、翌日12月3日まで救出活動が続けられましたが、9名の死亡と重軽傷者2名が確認されました。
崩落したコンクリート板の下敷きになっていたレンタカーのワゴン車からは、シェアハウスに住む男女5人が焼死体で発見されました。
また、トラックを運転していた男性は崩落直後に会社の所長に助けを求める電話を3度していましたが、発見時にはすでに亡くなっていました。
炎上して車種の判別ができなかった普通乗用車からは、70代の男女と60代の女性が焼死体となって発見されました。
笹子トンネル天井板落下事故、犠牲者遺族がNEXCO中日本を提訴
人災として遺族らがNEXCO中日本を提訴
NEXCO中日本とその子会社の怠慢が起こした笹子トンネル天井板落下事故について、遺族らは横浜地方裁判所に3度の民事裁判を起こしました。
総額約9億1,000万円の損害賠償の支払いを求めていましたが、横浜地方裁判所が下した判決は2社に対して計4億4,371万円の支払い命令でした。
裁判では遺族ら原告の主張を全面的に認め、NEXCO中日本らが適切な点検を行っていれば防げた事故だとし、遺族ら原告と被告が判決を控訴しなかったことから一審判決で確定しました。
「笹子トンネル天井板落下事故」原因～手抜き保守点検による人災
笹子トンネル天井板落下事故、原因は欠陥コンクリートの使用？
笹子トンネル天井板落下事故原因は、アンカーボルトの腐食による脱落ともいわれていましたが、トンネルに使われたコンクリートの品質の悪さがすべての原因とみる専門家が多いようです。
もしアンカーボルトの劣化と破損がコンクリート板落下の原因なら、１４０ｍの限られた場所だけで瞬間的な破壊が起きたのは不自然だと疑問視する専門家は多い。
もう記憶に薄いでしょうが、１９９６年から９８年にかけて山陽新幹線の路線各地で高架橋の床板コンクリートが次々にはがれ落ちる事故が起きました。それはコンクリートの品質の悪さが原因で、山陽新幹線の高架橋を造った１９６５年から７５年は高度経済成長時代にあたり、全国的な建築ブームで建築資材が不足していたんです。
笹子トンネルもまた、山陽新幹線の高架橋と同じ時期に造られており、品質の悪いコンクリートを使った可能性が非常に高いそうです。
笹子トンネル天井板落下事故は人災だった
笹子トンネル天井板落下事故原因は、安全管理を怠った“人災”による事故といわれています。
また、上記でも説明したアンカーボルトは腐食して破損したのではなく、ボルトを支えていた接着剤に問題があったことも判明してます。
専門家によれば、接着剤を使ったものは「ケミカルアンカー」といい、他の「打ち込みアンカー」などに比べ強度が弱く、また経年劣化も激しいという。
素人が想像しても、何トンもの天井板などを天井から垂れ下がったボルトが、天井にねじ込まれたりしているのではなく、ただ接着剤だけで支えられていたのだ。「本当か？」と驚いて当然だろう。
笹子トンネル天井板落下事故は、NEXCO中日本は吊り下げボルトの劣化を知りながら、打音検査せず手抜き保守点検を続けたために起きた事故だったのです。
「笹子トンネル天井板落下事故」生存者が語る当時の状況
笹子トンネル天井板落下事故生存者の家族
トンネル内の大半の人は助かった
笹子トンネル天井板落下事故は9名の死者を出した大惨事ですが、崩落事故当時に約50台の車が笹子トンネル内を走っていたことから大半の人は助かったことになります。
そのうちの一人、鈴木智博さんは家族で温泉旅行に行くため上り線を走っていましたが、運よく難を逃れた時の状況を以下のようにインタビューで語っています。
トンネル内にいた 鈴木智博さん
「板状のものがあって、その下敷きに車がなっているのが見えて、もうその時点では火があがっていて、さらに近づいたら天井に板が落ちた後のぽっかりと空洞が真っ黒く見えた。
ああ、これは天井が落ちていると分かって落ちるものなのかと驚愕（きょうがく）というか。」妻と２人の子どもは車を降りて、トンネルの入り口へ向かいました。
そのすぐ横を、引き返す車が猛スピードで次々と走り抜けていきました。妻 鈴木にし紀さん
「子どもが車に巻き込まれてということも考えたので、本当に映画を見ているような何か爆発して火災が広がっていくこともいろいろ想像したりして不安は不安でした。」家族全員がトンネルの外に避難できたのは、１時間後のことでした。
歩いて笹子トンネルを出た鈴木智博さんの妻や子供が引き返してきた車に轢かれなかったこと、玉突き事故が起きなかったことなどは不幸中の幸いだったのかもしれません。
笹子トンネル天井板落下事故、NHK記者のインプレッサが話題に
命を救った奇跡のインプレッサ
笹子トンネル天井板落下事故直後に、トンネルを上り方面に抜けた先には、助手席側が大きくひしゃげた1台の青いスバルの「インプレッサ WRX STi」が停まっていました。
この運転手はNHK甲府放送局に勤めていた記者・後藤喜男さんで、崩落事故が起きた際にコンクリート板の下敷きになりながらもアクセルを踏み込んで加速させ、唯一トンネルを抜けた車としてネット上で「さすがインプレッサ」として話題になっていました。
「ドシン、ガシャンという音とともに加速が鈍くなって、車体の左側をこう天井板がばっと落ちてきたのかなと。
（アクセルを）踏み込んで無理矢理、落ちて重なってくる天井板を押しのけてなんとかギリギリ走り抜けることができた。
車内を見渡したら、本来あった助手席の中が全部、潰れてしまっていて、妻が押し込まれるようにして運転席側に倒れ込んでいた様子が見えました。」
後藤喜男さんのインプレッサは上の画像のように半分が大破してしまいましたが、主にボディの損傷だけだったことから修復され、完全復活をしています。
完全復活した奇跡のインプレッサ
笹子トンネル天井板落下事故、遺族の悲しみは癒えず
笹子トンネル天井板落下事故から5年が経過した2017年12月２日に、遺族と中日本高速道路の幹部ら合わせて約70人が、事故発生時刻の午前8時3分に事故現場などで黙とうを捧げました。
犠牲者となったシェアハウス仲間のひとり、当時27歳の小林洋平さんの父親である小林寿男さんは、この日の午後に甲府市で毎年営まれている追悼コンサートで亡き息子を想ってサックスを吹きました。
小林寿男さん以外にも、犠牲者の両親や兄弟など多くの人が悲しみを背負って生きていくことになり、この悲しみは一生癒えることはないでしょう。
「笹子トンネル天井板落下事故」のその後と現在～心霊現象の噂も
笹子トンネル天井板落下事故犠牲者の霊が出ると噂に
言われも無い心霊現象の噂が流れた笹子トンネル
笹子トンネルは2013年2月8日16時に事故から68日ぶりに上下線それぞれ2車線ずつで通行可能になり完全復旧しました。
しかし、その頃から笹子トンネルでは亡くなった犠牲者の霊が出ると噂になり、通った車には手形が付く、エンジンが止まるなど囁かれていました。
よくあるありきたりな心霊現象の噂ですが、悲惨な事故が起きた現場を好奇の目で見るのは亡くなった方々への冒涜となるでしょう。
笹子トンネル天井板落下事故の慰霊碑が完成
2019年4月13日に慰霊碑が完成
2019年4月13日に、山梨県大月市の事故現場近くに犠牲者9名の霊を悼む慰霊碑が建立され、遺族らにより除幕されました。
２０１２年１２月、中央自動車道の笹子トンネル内で起きた天井板崩落事故の犠牲者９人を悼む慰霊碑が、山梨県大月市の事故現場近くに完成し、遺族らが１３日、除幕した。
建立したのは中日本高速道路で、笹子トンネルの事故現場から2キロあまり離れた出入口付近と、8キロほど離れた初狩パーキングエリアの2カ所でいずれも下り線です。
笹子トンネル天井板落下事故、会社側の刑事責任を問わず
事故発生から5年がたった2017年11月30日に山梨県警はNEXCO中日本などの経営者や職員8人を業務上過失致死傷の疑いで書類送検しています。
しかし2018年8月、起訴できる証拠がなかったとして関係者全員を不起訴処分。司法は刑事責任を問わないと判断しています。
これに対して、遺族側は不起訴処分を不服として、甲府検察審査会に審査を申し立てています。
この笹子トンネル天井板落下事故以降、全国では悲惨な崩落事故は起きていませんが、この事故を風化させないことが2度と同じような事故を起こさないために必要なことでしょう。
「笹子トンネル天井板落下事故」についてまとめると…
・笹子トンネル天井板落下事故当時、約50台の車が笹子トンネル内を走っていたことから大半の人は助かった
・笹子トンネル天井板落下事故は人災であり、吊り上げ天井の劣化を知りながら手抜き保守をしていたNEXCO中日本の責任は重大である
・笹子トンネル天井板落下事故後に、笹子トンネルでは犠牲者の霊が出ると噂になった
・笹子トンネル天井板落下事故の刑事責任は問われることなく、関係者8人は不起訴処分になっている
天井版の崩落により9名が亡くなった笹子トンネル天井板落下事故についてご紹介してきました。
不起訴となった元役員ら8人について、遺族が今後追及を続けたとしても立件されるのは難しいかもしれません。
それでも、亡くなった9名の無念を晴らすために遺族は戦い続けるのでしょう。
